- 「理解」を深めて記憶力の幅を広げる
- 心をつかむ企画書が書ける!文章力強化トレーニング
- 大人の勉強法が必要な理由
- 他人に依存する能力も「できるビジネスマン」の必須条件
- EQ(心の知能指数)はリストラ時代にこそ鍛えておけ
- 記憶の仕上げはアウトプット・トレーニング
- 「集中力」の正体を知ればだれでも暗記名人
- 自信がないときの「頼り上手」変身法
- くじけそうなときこそ人脈活用
- 「可能性想定ゲーム」で逆転の発想を得る
- 「ほめ上手」「頼られ上手」「受け入れ上手」に徹する
- 「豊かな推論」には落とし穴がある
- 「集中力が続かない」はプラス思考に転換する
- 「アメ」と「ムチ」は上手に使えば効果バツグン
- 苦手な上司も怖くなくなる感情コントロール術
- 「推論の偏りを修正すれば、もう判断ミスは怖くない
- もっと言いたいことが言えるようになるプレゼン上達トレーニング
- 批判的読書法で「複眼思考」を磨く
- 「独創性」は知識の蓄積でつくり出せる
- ビジネスマンのための資格取得必勝テクニック三原則
- 行き詰まったときには「成功の法則」から学べ
- 年をとっても記憶力は高められる
- 未来不安はそのまま「やる気」に転換できる
- 「メタ認知」をビジネスに活用する方法論を学べ
- 人脈の豊かな人は「共感能力」がちがう
- 柔軟な推論能力がビジネスの可能性をグンと広げる
- 海外取引も怖くない!ビジネス英語力獲得トレーニング
- がんばりがきかないときのうつ病治療応用法
- 「書きなぐりメモ術」の意外な時間節約効果
- 「できる人」はこうして時間をつくり出す
- 覚えたことを忘れない「起きがけ復習法」
- 「メタ認知」プラス「共感能力」で味方をふやせ
- 「つまみ食い読書術」で時間節約、能率アップ
- 楽観的になりすぎるのも考えもの
- 推論プロセスを数学に学ぶ
- 「できる人」は「メタ認知」を活用している
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「理解」を深めて記憶力の幅を広げる
「注意」と同じく、情報を入力する際に大事なもうひとつの要素が「理解」です。
カラオケの歌詞にしても、英語のものより日本語のほうが覚えやすいように、理解できるもののほうがはるかに記憶しやすいのです。
この仕組みもやはり、興味や関心に関係しています。
理解できることは、もともとそうでないことに比べてもおもしろく感じられるものです。
理解を通じて関心が高まり、注意力を高め「理解できる」入門書探しは勉強の基本。
まずはそれ「だけ」を覚えればいい。
ることができれば、それだけで記憶力もよくなるというわけです。
理解の場合、注意と比べると意識的に高めることができるという優位性があります。
そのうえ、結果的に関心も高まります。
たとえば、それまでつまらないと思っていた勉強が、自分に合った解説書に出合ったのをきっかけにおもしろくなったなどという話も、受験生たちの間ではよく聞かれる話です。
このことは勉強の必要性を感じるテーマに対して、自分にとって理解しやすい解説をしている本を探すだけで、勉強や記憶の効率を上げることが可能だということを意味しています。
興味のある分野、あるいは資格試験などの勉強にしてもそうですが、相性の合う入門書、解説書を見つけることは、まさに勉強を進めるうえでの基本中の基本です。
具体的には、ひたすら立ち読みをして、「これならば」と納得できる本を探すのがとりあえずは賢明でしょう。
めざすものが資格試験などの勉強ならば、講義がよくわかると評判の予備校、対策塾の門をたたくのもいい方法です。
評判が高いところは、概して理解させることがうまい、教え上手である可能性が高いものです。
理解を進めるためにもうひとつ大事なのは、自分の理解度、記憶状態の確認です。
きちんと理解していないのにわかったつもりになっているようでは、記憶に残るはずもありません。
学校の勉強では、中間テスト、期末テストなど強制的に受けなければならない試験を理解状態の確認に使えますが、自発的に行う大人の勉強ではそうもいきません。
そこで、私が受験勉強のテクニックとして提唱している「黒塗り勉強法」を応用することをおすすめします。
本来復習効果をねらったこの勉強法は、理解度のチェックにも有効だからです。
そのほかに手っ取り早くできる方法として考えられるのは、自分が覚えたことを人に伝えるやり方です。
人に上手に説明できないようでは、まだまだ理解が中途半端なのです。
うまく説明できなかった部分を重点的に復習することで、勉強の能率が上がるでしょう。
ちなみに、これと似た方法に、教訓帰納というテクニックがあります。
ある問題を解いたり、答えを教えてもらった後、「なぜ解けなかったか」「その間題からなにを学んだか」という教訓を一般的ルールとして引き出すものです。
理解を深めることを目的にしたこうしたテクニックもまた、記憶を高めるうえで効果的です。
カテゴリー:ビジネス思考力を鍛える勉強法
心をつかむ企画書が書ける!文章力強化トレーニング
文章力を向上させることもまた、ビジネスの幅を広げる強力な武器になります。
小説を書きたいというのならともかく、報告書、レポート、企画書などでまわりに評価される文章術を身につける程度なら、努力次第でだれにでも容易にできるでしょう。
文章を上達させる最短の道は、これまた型にはまった文章をたくさん書くことです。
スタイルにはとくにこだわる必要もありませんが、わかりやすく、論旨のはっきりした文章は読み手から高い評価を得ることができます。
「型」の中身は、(1)問題提起、(2)それに対する自分の意見、(3)結論、というのが基本です。
まず、(1)の問題提起ですが、「What(〜とはなんだろう?)」というスタイルならば、(2)で当然その答えが続きます。
また、テーマそのものがYES、NOを問うようなものであれば、問題提起の段階でまず自分の立場をはっきりさせるところから始めるといいでしょう。
さらに、自分が明快に述べた意見の補強説明を行います。
知識や参考文献からの引用などは、すべてここで使うべきです。
これに続く形で、それまで述べたことをまとめます。
明快かつ簡潔な結論を述べる形で最後をしめれば、これで立派な文章の完成です。
なお、文章を書くときは、あらかじめテーマを表すタイトルをつけ、それを意識しながら以上のプロセスで書き進めると、論旨も明確になって書きやすいでしょう。
型にはまった文章を書く練習は、自分の言いたいことを前面に出さなければできないので、論旨の整理の場としても使えます。
また、補強説明を書く際には、必要なことを調べたり、文献を集めたりする必要も生じます。
多くの文章を書くことで情報収集の習慣も自然に身につくというわけです。
そして文章を書くことの最大の利点は、なによりも、書いているうちに自分の考えを深めていくことができることです。
つまり、文章を書くこと自体がビジネス思考力を磨く絶好のトレーニングになるので、前向きに励んでいただきたいと思います。
型にはまった文章を書く練習を続けていくと、書くことそのものを楽にするというメリットもあります。
きれいな文章をめざすあまり書くことを尻込みし、いつまでたっても文章力が上達しないというのがいわゆる世の中のお決まりパターンです。
これをクリアするにはひたすら書き続けるしかないわけですが、その点でもこの練習は最適だというわけです。
なお、テーマにもよりますが、練習で書く文章量の目安は800字前後にしてください。
この程度の短い文章で箇潔にまとめられるよう意識せずに書くと、えてしてのんべんだらりとした印象を与える文章となってしまうものですから、要注意です。
また、ありきたりのアドバイスになりますが、文章のなかでは、いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのようにという5WIHを書き込むことは最低限、心がけてください。
この点を意識するだけでも、書き上がった文章は自然と読みやすい印象になるものです。
そして、文章を書くときは、なるべくならパソコンやワープロなどを使うといいでしょう。
手書きとちがって、段落ごと移動させたり、スタイルを自由に寧えたり、途中でいくらでも書き換えがきくので、文章を書くのが苦痛でなくなるからです。
書き上げた文章を人に見せるとき、活字になっているだけで整った印象を与えるというメリットもあります。
ビジネスで求められる文章のよしあしは、ほとんど慣れが規定するといっても過言ではありません。
以上の点を頭のなかに入れ、型にはまった文章を書く練習に励んでください。
カテゴリー:ビジネス思考力を鍛える勉強法
大人の勉強法が必要な理由
未来不安の時代の「ビジネス心理戦」
対外折衝はいうに及ばず、上司や部下とのやりとり、さらに長い不況からくるリストラやいいしれぬ不安など、現代に生きるわれわれの周りには、心理的なストレスが溢れています。
当カテゴリーでは、こうした不安すべてを「ビジネス心理戦」という言葉で表現しました。
そして、そのようなストレス状況にある自分の環境を改善するのみならず、問題解決能力を身につけ、人間関係をよりよいものにしていく方策を解説しています。
その方策とは、「勉強」です。
「勉強」と聞くと、あまり楽しくないこと、できることなら避けて通りたいものと一般には受け止められがちです。
しかし、そんな人たちに強くいいたいのは、苦労に見合うだけの見返りが確実にあるのが「大人の勉強」だということです。
もちろん、必要な能力、必要な知識を得るために正しい勉強を行った人だけが得られるという条件つきですが、必ず実利を伴ってくるのが社会に出てからの勉強なのです。
じつは、私は最近、会社の倒産不安からうつになってしまう一流大卒のエリートビジネスマンから相談を受けるケースが増えています。
彼らいわく、
「これまで出世競争に敗れる心配をしたことはあったけど、失業の心配をしたことはなかった。
しかし、友人の勤める会社が現実に倒産するのを目の当たりにして、わが身が不安になった」
というのです。
仮にリストラを逃れ、クビにならずにどうにか定年を迎えられたとしても、頼みの綱だった年金財政の破綻が不可避とあっては老後の保障もあやふやです。
厚生年金と企業年金で悠々自適に過ごせるはずの将来の計画さえも崩れて、不安だらけの老後を想像しながら暗澹たる思いで過ごしているような方は、みなさんのなかにもさぞかし多いことでしょう。
だからこそ、時代や理想モデルの変化を嘆き、現実から目を背けていては、新たに迎えた二十一世紀を楽しく暮らすことなどできません。
これから先、社会のなかで自分だけが損をするという状況に陥らないためにも、まずは自分の置かれている状況を正しく認識すべきなのです。
そんな人たちのお役に少しでも立てればと、私のもっている勉強のノウハウを提供したのが当サイトです。
ここに紹介した勉強に関するさまざまなテクニックやエッセンスはどれも、私が実際に成果をあげてきたものばかりです。
ビジネスマンのみなさんが「ビジネス心理戦」を勝ち抜いていくうえでも、必ず役立つはずです。
「ビジネス心理戦」に勝つといっても、当サイトの勉強法は、個人のスキルアップのための努力を説いたものです。
策を弄してまわりの人たちを蹴落とすような、人にとやかくいわれるものではありません。
もしもあなたが倒産危機やリストラ不安を感じているならば、なおさらです。
「変化が激しいこんな時代だからこそ、勉強することはいろいろな意味で得になる」というメリットを自覚し、生き残りをかけて「大人の勉強」という形で自らのスキルアップをはかる努力を積極的に行っていただきたいのです。
それでは、すでに社会人として実績を積んでいるあなたが未来の不安を払拭するためには、いま、何を勉強すべきなのでしょうか。
一般的に、ビジネスマンの能力は、営業成績、事務処理能力、開発能力などさまざまな観点から測られます。
これらのなかには、発想力、創造力といったクリエイティブな感性のようなものも含まれます。
これら生まれながらの素質やそれまでどんな訓練を行ってきたかによるところが大きいとされる能力は、即席の勉強ではなかなか伸ばせないものと思われがちです。
ところが、こうした生まれながらの感性や経験則に左右されがちな、いわば「ビジネス思考力」にしても、心理学の世界で最近注目を集めている認知心理学を利用すれば、じつは机上の勉強によって磨きをかけることができるのです。
これがいわば「大人の勉強法」の特徴でもありますが、ノーベル賞を受賞するほど優れたスーパーマンと同等の発想力、創造力を開発するまでには至らないまでも、どんな人でも、いまより確実にステップアップできる方法を示しています。
また、ビジネスで結果を出すうえでは、ビジネス思考力を磨く以前の問題として、いまの時代に必要な新たな知識や能力を獲得することも不可欠です。
現実に、多くの人が時代の変化にうまく対応できずに苦しんでいる姿を見ると、社会的ニーズが高まっている新たな知識の獲得は、生き残りをかけた激しい競争を有利に勝ち抜いていく強力な武器になると考えられます。
その意味で当サイトでは、ビジネス思考力に磨きをかける勉強法と、豊富な知識を得るための実践的勉強法の強化策を、二本立てで解説することにしました。
ビジネス思考力と知識の関係は、車の両輪にたとえることができます。
どちらか一方だけでうまく機能することはありません。
しかし両方を獲得して自分のなかでうまく活用できたとき、その人は多くのメリットを享受できるでしょう。
その真髄が理解できたとき、その人はビジネスの世界で日々繰り広げられる「心理戦」を優位に運べる能力を身につけているにちがいありません。
時代はいま、学歴社会、年功序列制度が崩壊し、競争社会、能力主義へと流れが変わりつつあります。
今後は社内でも社会でも、勝ち組と負け組の明確な色分けがなされていくことは避けられません。
当サイトで紹介する勉強法のテクニックを積極活用され、ひとりでも多くの方が「できるビジネスマン」へと変身し、将来に不安を抱くことなく人生を歩んでいかれることを切に願っています。
カテゴリー:ビジネス思考力を鍛える勉強法
他人に依存する能力も「できるビジネスマン」の必須条件
ひとりの人間がもてる能力には限りがあります。
知識ひとつとってもそれは同じで、ある分野でスペシャリストになれたからといって、ほかのすべての分野でもスペシャリストになることは現実には不可能です。
ところが実際のビジネスでは、自分の理解している分野以外の知識を求められることが往々にしてあります。
そんなとき、自分で新たに勉強して知識を取り込むのもひとつの解決方法ですが、効率を考えれば、その知識をすでにもっている人を上手に利用するほうがベターな選択といえるでしょう。
たとえば、身のまわりに豊富な知識をもつ知り合いがたくさんいたとします。
自分自身に知識はなくても、その人たちから正しい情報を引き出す能力に長けていれば、なんら不都合はありません。
自分のもつ知識以上のものをあたかも外付けのハードディスクとしてもっているようなものだからです。
推論の材料となる知識を、このようにアウトソーシングできれば、これほど便利なことはありません。
現実のビジネスの世界でも、知識のある知り合いを数多くもつ対人関係能力に長けたビジネスマンは、「できる人」として高い評価を得ています。
現代は、たしかにインターネットを通じていくらでも情報が手に入る時代ですが、そのこと自体はまわりに対して優位性をもつものではありません。
豊富な情報から適切に取捨選択を行い、推論に役立つ形で提供してくれる点で、やはりその道の専門家からの知識提供に勝るものはないように思います。
これは自分の認知状態をモニターするメタ認知にしても同じです。
客観的視点を必要とするメタ認知は、だれもが独力で簡単にできるものでないことはいうまでもありませんが、その一方で、必ずしも自分自身で行う必要もないわけです。
そもそも人間の感情の力は驚くほど大きく、人が感情的になると、メタ認知によって推論の修正をすることが困難になる傾向があります。
人によっては完全に自分を見失ってしまうこともありますから、場合によっては自分の認知パターンや感情状態をより客観的な立場からモニターしてもらうほうが、より実際的なメタ認知機能を果たすこともあるはずです。
感情状態によって人間の推論、認知パターンが変わるということは、精神医学の世界では常識になっています。
うつ病になると認知が悲観的になり、ひどいときには妄想まで生じるのはその一例です。
こうしたゆがんだ認知パターンを変えるために、プラス思考や他の認知パターンの可能性を提供することで悲観的認知を矯正する認知療法なども生み出されましたが、少なくともうつ的感情に支配されている状態の人が手助けなしに独自にできるものではありません。
現実の問題として、うつ病患者に認知療法を伝授して自分でやらせるより、認知療法家を介して認知パターンを変えていくほうがはるかに治療は容易です。
すなわち、ここでいうところの認知療法家に当たる他者、認知パターンの修正に長けた協力者の存在があれば、場合によってはより実際的なメタ認知が行えるというわけです。
人の意見やアドバイスが素直に聞けるだけでなく、自分に意見をいってくれる友人、ブレーンを上手につくる能力に長けた人が社会で高い評価を受けているのは、まさにそのような理由からなのです。
さておき、「ビジネス心理戦」に長け、すぐれたビジネス思考力を持つ二一世紀型「できるビジネスマン」の条件を、もう一度整理しておきましょう。
- (1)思考の材料となる十分な知識を備えている
- (2)その知識をもとに幅広いバリエーションの推論ができる
- (3)推論の誤りに気づき、それをそのつど修正しうるメタ認知力に優れている
- (4)メタ認知によって、自分の感情状態を知り、それをコントロールできる
- (5)共感能力をもち、他人の心を理解している
- (6)対人関係能力にすぐれ、問題解決に協力者の手助けを受けられる
厳しい不況風が吹き荒れ、先行きが不透明な時代。
そのなかで未来の生活を不安のないものにするには、これらの能力を備えていくための「大人の勉強」に励むしかありません。
今後、テクノロジーはさらに進歩していくでしょうが、ここに示した「二一世紀型できるビジネスマン」像が大きく変わることはないでしょう。
あとはあなた自身が現実をどう受け止め、当サイトのアドバイスを生かして「大人の勉強」にいかに努力するかにかかっているのです。
カテゴリー:ビジネス思考力を鍛える勉強法
EQ(心の知能指数)はリストラ時代にこそ鍛えておけ
さて、ここでいったん認知心理学から離れて、昨今新しいタイプの知的能力として注目されているEQという概念について述べることにしましょう。
対人関係や感情コントロールに重点を置くEQの概念は、エール大学のピーター・サロヴェイとニューバンプシャー大学のジョン・メイヤーによって提唱されました。
人の能力をはかるものとしてそれまで主流だったIQに対抗する概念として受け止められ、(1)自分の感情を正確に知る、(2)自分の感情をコントロールできる、(3)楽観的に物事を考える、(4)相手の感情を知る、(5)社交能力の五つの能力を柱にしています。
EQはそもそも、IQの高いエリートのなかにそれをうまく使えないでいる人間がいるという現実の問題を直視し、彼らに欠けている能力とは何かを検討するために考えられた概念です。
その意味では、IQ=知的機能が高い人間は社会で成功するはずである、成功の背景にはIQ的能力は不可欠である、という前提がベースにあることがうかがえます。
実際に会社でまわりを眺めてみれば一目瞭然ですが、出世を果たしている人は、根回しがうまかったり、上司の受けがよかったりと、人間関係のもち方に長けているケースが大半です。
世間的なイメージとしては、高学歴で世している人にはなぜか「冷たく傲慢な人」というステレオタイプの評判がつきまといますが、これが明らかにまちがいであることがわかります。
そもそも日本の社会では、感情のコントロール能力、他人の気持ちを理解する能力が、昔から強く要求されていました。
学歴重視、年功序列の時代から、高学歴でありながら出世できなかった人は、まさにこのEQ能力が足りないタイプでした。
ちなみに、EQ的能力を古くから評価してきた日本では、社会生活や日常生活のなかでその必要性が高いこともあって、諸外国に比べると人々のEQが比較的高い傾向にあります。
このことは、「ビジネス心理戦」に強い「できるビジネスマン」の必須要件である「共感能力」の観点からも好ましいものなので、意識して日常生活を送るなどして、EQ能力には大いに磨きをかけたいものです。
なお、その際の注意点としてぜひ触れておきたいのは、EQ能力を高めればいいからと、IQ的知的トレーニングをないがしろにしていいということにはならないということです。
EQとIQは、本来対立するものではないはずなのに、「IQが高いとEQが低い」と誤解している人は意外に多く、これは困りものです。
IQの高さとEQがなんら関係ないことは、日本にEQ概念を紹介した『えQ − こころの知能指数』の著者、ダニエル・ゴールマンも明言しています。
このことは私自身、彼との対談のなかで直接確認しています。
IQとEQの両方を同時進行で高めることは決して欲張りではありません。
むしろ積極的に行うべきなのです。
繰り返しになりますが、十分な知識を備えること、柔軟な推論能力を磨くこと、さらにはメタ認知的自己感情把握ないしコントロールや、対人関係能力を高めていくことなどは、どれも他の要素と対立するものではありません。
そのことを理解したうえでEQ的能力を伸ばしていくことは、「ビジネス心理戦」に強い「できるビジネスマン」へ到達する近道となるのです。
EQの五つの柱
- (1)自分の感情を正確に知る。
- (2)自分の感情をコントロールできる。
- (3)楽観的に物事を考える(自分を動機つけられる)。
- (4)相手の感情を知る。
- (5)社交能力。
カテゴリー:ビジネス思考力を鍛える勉強法
記憶の仕上げはアウトプット・トレーニング
入力がうまくいき、復習によって保持された知識も、実際に使う段階で出力がうまくいかなければ宝の持ちぐされです。
「のどまで出かかっているのに……」などということがよくありますが、肝心のときにそうならないために、記憶の出力段階である想起段階の仕組みを知って、記憶した知識を上手にアウトプットするテクニックも身につけておきましょう。
勉強したことを人に伝えれば、記憶した情報は必ず脳に定着する。
アウトプット・トレーニングは、じつは日本人に最も欠けている部分ではないかと私は考えています。
社会に出てからも、自発的勉強で知識量を高めている人はよく見ますが、アウトプット・トレーニングまで心がけている人はなかなかいません。
そのことは、日本人がプレゼンテーション下手、ディベート下手といわれることと、決して無縁ではないように思います。
ビジネスに不可欠なプレゼンテーション能力、また資格試験などにもいえることですが、覚えた知識は人に伝達したりテストで結果を出さないことには意味がありません。
したがって、この種のトレーニングにも積極的に励むべきなのです。
一発勝負で成功する人など、そうそういるものではありません。
また、本人は準備万端で臨んだつもりが、単なる知識の披涯になって相手に不快感を与えてしまった、無教養を見せてしまって失望させた、ということは現実によく耳にする話です。
せっかくのアピールの場が、一転して評価を下げる場になってしまうわけですから、これでは身も蓋もありません。
アウトプット・トレーニングの目的は、覚えた知識を必要とされる場面で使えるようにすることにあります。
具体的には、同僚相手にプレゼンテーションの予行演習をしてみたり、あるいはひとりでシミュレートしてみてもいいでしょう。
日頃から訓練しておくことは、失敗回避に役立つはずです。
資格試験を目的にした勉強などの場合は、過去の試験問題で腕試しをすることで、記憶した知識が自分のものになっているかどうかを確認することは容易にできます。
想起段階は、いわば記憶の仕上げ段階と位置づけることができます。
アウトプット・トレーニングを少しでも実行したかどうかで、得られる結果は必ずちがってきます。
日々の生活のなかで、機会あるごとにできるだけ試すように心がけたいものです。
カテゴリー:ビジネス思考力を鍛える勉強法
「集中力」の正体を知ればだれでも暗記名人
最近の心理学の考え方では、情報を入力する記銘段階がうまくいくかどうかは、「注意」と「理解」というふたつの要素で決まるとされています。
注意とは、人があるものに焦点を当てている状態をいいます。
これを長く維持することが出来る人を評して「集中力がある」というくらいですから、注意力が記憶力のよしあしに深く関係してくるのも当然といえましょう。
その反対に、一般的に高齢者のうつ病の場合、記憶力が落ちることがよく知られています。
抑うつ気分のために全般に注意力が落ちるのがその原因です。
このことは、「気もそぞろ」の状態でいれば、記憶もうまくいかないことを示しているわけです。
このふたつを対比してみると、注意力=集中力をつけることで記憶上手に変身できるという、記憶力アップのひとつのポイントを導き出すことができます。
さすがにつけ焼き刃の一時的トレーニング法はありませんが、長い時間をかけて集中力をつけていく方法ならたくさんあります。
以下に紹介する集中力アップのツボをぜひ覚えて実践していただきたいと思います。
集中力を高めるツボ − 趣味的な関心を優先する
人間の記憶は、生まれつきの能力の差以上に、注意の差によって記憶に残る量がちがうと考えられています。
とくに興味のあるものなら注意は自然とそこに向かい、多くのことを覚えることができます。
例としてはやや悪いかもしれませんが、学習障害者であってもある分野ですばらしい記憶力を発揮する人がいます。
本人が意識しているかどうかはともかくとして、覚える対象に対してすさまじい注意力を向けているからこそ可能なことです。
一見すると単純暗記に見えるものでも、鉄道マニアが駅や路線、車好きが車、ワイン通がワインの名前やヴィンテージを覚える能力に長けて見えるのは、同じ現象といえます。
その意味で、社会に出てからの大人の勉強は、記憶力アップのトレーニングとして最適といえます。
なぜなら、学生時代のようにカリキュラムにしばられることはなく、自分の好きなこと、興味をもてることに集中できるという利点があるからです。
ときには、仕事上やむをえず、興味のないことでもやらなければなりませんが、そういうときも、少しでも自分が関心のもてるテーマを優先して勉強すれば、それほど苦労をせずにすむでしょう。
うまくいけば、成功への大きなカキにつながるかもしれません。
集中力を高めるツボ − 強い動機づけをもつ
関心も興味ももてないならば、当然勉強には身が入らず、うまく記憶もできません。
困りた状態ですが、対策がないわけではありません。
どうしても身が克ちないときは、強い動機づけをすることでカバーするのです。
試験前に一夜漬けで勉強をした経験のある人ならわかるはずですが、人間はせっぱつまりた事情があれば、もともとは興味がなかったものに封じでも注意を向けることができるものです。
生活がかかっている、収入を左右する、異性にもてるようになりたいなど、動機づけの中身は人それぞれですが、勉強を始めるときにこれらを強くする意識することは注意力を増すいい方法になるわけです。
大人の勉強で成果を上げられるかどうかは、強い動機づけができるか否かにかかっているといえます。
裏を返せば、強い動機づけが可能な対象を勉強すること、それが成功の秘訣でもあるわけです。
集中力を高めるツボ − マイナス要素を減らす
あるテーマに関心があり、人一倍強い動機を感じていれば、それだけで充実した勉強ができるように思えるはずです。
ところが、これらの要素を備えているのにいっこうに勉強がはかどらない、という人も少なくありません。
その原因は多くの場合、注意力を阻害するマイナス要素にあります。
意欲や関心はあっても、関心の対象がほかにもたくさんあったりする場合や、不安や抑うつのような気分の不調などがそれです。
受験勉強のときなど、恋い焦がれている彼女や彼のことが気になって、肝心の勉強がいっこうにはかどらないということは往々にしてあることです。
ビジネスマンのケースでも、ひいきの野球チームやサッカーチームの試合状況が気になって、試合の最中は残業の能率がなかなか上がらなかったなどという話を耳にします。
集中を妨げるこうしたマイナス要素を減らすには、仕事や勉強以外のものを排除する禁欲的な生活が一番に思われるかもしれません。
しかし、現実には我慢することでかえって集中が乱れ、能率が落ちることが多いので、時間の配分を決め、勉強とそれ以外に関心を抱いているものの両方をこなしたほうが、結果は芳しいようです。
たとえば異性との交際など、週に一度は心おきなくデートするかわりに毎日の長電話をやめるというふうにできればいうことはありません。
ただこの場合、かえって恋人への思いがつのってしまうようなこともあるので困りものです。
こうなると、どう転んでも勉強を阻害するマイナス要素にしかならない交際そのものを考え直さざるをえません。
酷ないい方に聞こえるかもしれませんが、要するに、集中を妨げるよけいな関心事を減らすのが、注意を高める秘訣ということです。
なお、気分の不調による注意力低下の問題と対策は、あらためて別の箇所で触れることにします。
カテゴリー:ビジネス思考力を鍛える勉強法
自信がないときの「頼り上手」変身法
やる気はあるのになかなか仕事が手につかない、わかってはいるけどできないというのは、だれもが1度や2度は経験したことのある悩みです。
こんなとき、まわりで眺めているだけの無責任な第三者は、「悩む暇があったらその分努力すればいい」などといったりするものですが、本人にしてみればそんなアドバイスは迷惑以外のなにものでもありません。
人はひとりでは生きられないもの。
自分を支えきれないときは遠慮なくまわりにサポートを求めるべし。
考えることとやることがかみ合わない状況は、だれにでもよくあります。
営業成績が伸び悩んだり、リストラの危機にさらされたり、とくに精神が不安定な時期にはなおさらです。
こうした問題は、最終的には自分の力で解決していくしかないのですが、サポートをしてくれるよき理解者がいれば、窮地から早く脱することができるのもたしかです。
精神分析の祖といわれるフロイトは、心の病は無意識の不安が引き起こしていると主張しました。
そして、「不安の正体を解釈して治す」という精神分析による治療モデルを考え出しています。
その根底にあるのは、「自我をしっかりさせる」ことで不安にすすんで立ち向かえるようにするという、いわゆる自我心理学と呼ばれる考え方です。
自我心理学の影響を強く受けているアメリカでは、幼児の頃から自立させることをよしとしています。
三歳くらいになると個室を与えますし、泣いてもわめいてもひとりで寝かせる習慣などはその象徴です。
よちよち歩きの子どもが転んでも、アメリカ人の親はすぐに助けることはせず、子どもが自分で起きあがるのをじっと待っています。
人に頼るのはよくない、自力で困難を乗り越えてこそ一人前の大人になるという自我心理学理論を、子育てにおいてそのまま実践しているわけです。
この考え方が、教育学にもそのまま応用されています。
ところが、最近の風潮として、フロイト流の自我心理学を見直す考え方がアメリカでも主流になりつつあるのです。
自我心理学を見直す流れは、コフートに代表される自己心理学の考え方のなかに見ることができます。
人は人との関係のなかで生き、依存し合ったりはめられたりすることで成長していくというのが、この新たな流れのモデルです。
根底には、「自我をしっかりさせる」ではなく、「他者との関係のなかで自信を回復することで自分をしっかりさせていこう」という発想があります。
つまり、自己心理学的な立場に立てば、自分を支えきれなくなったときはひとりで解決することにこだわる必要はないということです。
人はひとりでは苦しくてできないことでも、だれかに支えてもらうことで努力を持続できます。
それが単なる個人の成長にとどまらず、支えてくれたまわりの成長にもつながるのです。
これまでの人生を振り返るとき、親友や恋人、両親、よき伴侶などに支えられたおかげで苦難を乗り切ることができたという経験は、だれもがもっているはずです。
多くの受験生を指導してきた私自身の経験からいっても、弧独に耐え、自分の力だけで悩みや困難を乗り越えてきたという人は、ほとんど見たことがありません。
自我心理学モデルは、人間の心を理解するときには役立ちますが、その人間が不安に陥ったときにどう生きればいいのかという問題の解決にはあまり役に立たないという批判が強まっています。
むしろ、人間関係に注目した自己心理学的な考え方のほうが、困難にぶつかった状況を打開するためのより現実的なヒントを多く含んでいるように思います。
一方的に依存するのは考えものですが、まわりとギブ・アンド・テイクの関係を築いて苦しいときに支え合うことは、恥ずかしいことでも悪いことでもありません。
非常に合理的な解決法なのです。
カテゴリー:ビジネス思考力を鍛える勉強法
くじけそうなときこそ人脈活用
困ったときに支え合える仲間がいることほど心強いことはありません。
そんな仲間とともに目標に向かって努力し、その途上で励まし合うことができれば、仕事に限らず何をするにも大きな成果が期待できます。
「それならば今日から親友づくりに励もう」とだれもが考えたくなるところですが、親友づくりはそう簡単にできるものではありません。
もともと人間の心は、ここを押せばこう反応するという単純なつくりにはなっていません。
親友のつくり方のマニュアルなどといった都合のいいものは、この世の中にはないのです。
そうはいっても、精神科医の立場から、どうすれば仲間や親友ができやすいかという原則論ならアドバイスできます。
以下にそのヒントをいくつか示しますので、現実の人間関係のなかでいろいろ動きながら試してみてください。
いい面も悪い面も含めて好きになる
外面はしっかりしているように見えても、そのじつ内面がぐらぐら揺れていることは往々にしてあります。
人にはだれでも心が不安定な時期はあるし、鼻につく欠点のひとつやふたつは持ち合わせているでしょう。
したがって、常に自分を支えてくれる「完璧な友」を求めていては、支え合える関係など築けるはずもありません。
親友とて、理想や幻想のなかに住んでいるのではなく、ほどほどの現実のなかにいる生身の人間です。
いい面もあれば悪い面もあるのは当然で、悪い面を認めたところに本当の人間関係はあります。
成熟した親友関係というのも、じつはこんな暗黙の合意の上に成り立つものなのです。
これからわかり合っていく関係
自分のことをまったく知らない相手に、「あなたのことが好きです。つき合ってください」といきなり告白したところで、相手は面食らうだけです。
恋愛が成就するまでには、日頃からそれとなく意思表示を行いながら関係を密にしていく段階をふんでいく必要があります。
支え合う仲間をつくるのも同じことです。
初対面なのにいきなり深刻な話をされても、相手は気味悪がるか警戒するだけです。
そうではなく、徐々に関係をつくっていくつもりで、長いつき合いのなかで試行錯誤しながら理解を深めていくべきです。
話す前から相手に過度な期待や幻想を抱いてしまうと、コミュニケーションも不自然かつ一方的なものになりかねません。
自分のことを理解してほしいのなら、まずは相手のことを理解するのが一番です。
下心だけでは関係は長続きしない
あいつは自分にとって役に立つやつだから、友人になりたい。
こんな目的だけでつき合っている場合、その関係は長続きしないものです。
互いに相手から得られるものを期待するのは、決して悪いことではありません。
ただ、それ以前に、親友関係を築くには「こいつとは気が合いそうだ」というフィーリングが必要です。
この感覚は徐々に感じ合うこともあるので、最初のきっかけは「下心ありき」でもOKです。
それでも最終的には、フィーリングに支えられて互いが理解し合い、そのうえで課題を共有しながら協力を深めていくのが理想です。
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「可能性想定ゲーム」で逆転の発想を得る
複眼思考を取り入れたトレーニングと似たものに、ある状況を想定して、今後起こり得ることを可能なかぎり想定してみるやり方があります。
これを「多様な可能性の想定」と呼んでいます。
たとえば、IT革命という時代のキーワードを設定して、未来を予測するとします。
多くの人は、この言葉から短絡的な想像しかできず、「これからはコンピュータを勉強しなければいけない」「早めにパソコンを買って練習しなければならない」などと、ステレオタイプの発想に陥りがちです。
ところが、あらゆる可能性を考えていく思考を、心がけると、実際には思いもよらない点に気づくことがあるわけです。
たとえば、IT時代のいまだからこそ、「情報の取捨選択、判断といった人間の知的機能が重要になる」という逆転の発想に行き着くかもしれません。
携帯電話やゲーム機、カーナビがパソコンと同じ端末の役割を果たしているのを見て、世間でよしと思われているパソコンというたったひとつのビジネスツールの練習に励むより、入力はさらに簡易化されていくから、むしろ的確な文書を頭でつくる能力を身につけるほうが大事だという考えに向かうかもしれません。
意外なことに、「○○はもう古い」が口癖の、一見すると先進的な人のほぅが、概してひとつの可能性しか考えられない狭い了見の持ち主になる危険性が高いようです。
新しいことをやっている、新しい情報をもっているといぅ自信が、自分がもつアイデアや情報の確かさを疑えなくしているからです。
結果として、ほかの可能性が考えられなくなり、ひとつの見方に固執するステレオタイプになっているとしたら、これほど不幸なことはありません。
いわゆるディベートなどの場では、この種のステレオタイプの人が声の大きさを利用して話を有利に進めたり、ほかの可能性を考えて出された意見を「論点がずれている」と言下に否定する傾向が見られがちです。
テレビの討論番組などもまさにこのとおりですが、まわりで見る側としては、論破している人の意見を覆したり、つまらないものとして扱われるずれた意見から新たな可能性を検討する楽しみ方のほうが、推論のトレーニングには大いに役立ちます。
いずれにせよ、ときと場合に応じて、起こり得る可能性をなるべく多く考えられる柔軟な発想は、ぜひ身につけたいものです。
たったそれだけで、自分のなかの推論能力も豊かになるわけですから。
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「ほめ上手」「頼られ上手」「受け入れ上手」に徹する
人間ひとりのもてる能力には限りがあります。
ビジネスの現場でも、自分ひとりの力ではどうすることもできない問題やトラブルが発生して困惑することはよくあります。
そんなとき、自分の弱点をカバーしてくれる協力者たちの手助けが得られれば、問題解決が楽になることはまちがいありません。
まわりの人たちと上手な相互依存関係を築きたいという考えは、おそらくだれもがもっているでしょう。
しかし、人づき合いはなかなか難しいもの。
現実には職場などで人間関係がうまくいかずに悩んでいる人は多いはずです。
前出のコフートによれば、人間が他者に求めるものは、(1)鏡自己対象機能、(2)理想化自己対象機能、(3)双子自己対象機能のおよそ三つに分類されます。
それぞれの詳細については後に触れることにしますが、この三つのニーズが満たされない相手と接するとき、人は不愉快になり、攻撃的になるとされているわけです。
逆にいえば、この三つのニーズを満たしてくれる人に出会ったときはその人が好きになるし、その人を手放したくないという気持ちが強くなることを示唆しています。
つまり、この人間の三つのニーズを理解して相手が心理的に依存できる状態をつくってあげられるかどうかが、良好な人間関係を築くうえでのポイントになるというわけです。
以下は、コフートが示した自己愛を満たすことができる三つの自己対象機能です。
それぞれの内容をよく理解し、よき協力者づくり、人間関係の円滑化、あるいは商談などの交渉術などに、幅広く応用していただきたいものです。
鏡自己対象機能
相手がなにかをしたとき、はめたり注目したりすることで相手の自己愛を満たす機能です。
これは対人関係を好転させる重要なテクニックです。
たとえば、恋人が髪型やファッションを変えたとき、それに気づいたり、ほめたりすることで相手が満足するのは、この機能が働くからです。
部下や同僚などの成功を素直にはめたり、−緒になって喜ぶことができれば、自己愛が満たされた人は必ず相手に好感をもつようになるでしょう。
理想化自己対象機能
いじめにあったりして落ち込み、不安になっている子どもでも、神様のように頼りになる父親から声をかけられ、ひざの上に乗せてもらったりすると、それだけで安心感を得ることができます。
また、自分もそのような強い父親のようになりたいと脹い、再び生きる方向性が与えられることもあるでしょう。
人間は、不安なときや落ち込んでいるとき、このような「神様」をもちたがります。
そして、父親が子どもの神様役を引き受けたように、こんな形で相手に安心感や生きる方向性を与えてあげるのが、この理想化自己対象機能と呼ばれるものです。
理想化自己対象機能は、上司が部下に対して神様役を演じたり、または互いに同等程度なら一般の人間関係にも応用可能です。
相手が不安を抱えたり落ち込んでいるとき、積極的に「強い人間」役を引き受けることで安心感を与えてあげるわけです。
それは結果的に、相手の尊敬を引き出すことにもつながります。
うまく機能すれば、信頼関係が深まることはまちがいありません。
双子自己対象機能
相手が落ち込んでいるとき、こちらが必死になってほめているのに「お世辞をいってるだけ」とつれない返事を返されたり、神様役を引き受けようと努力してもかえって「あなたは優秀だから」とひがまれてしまうことがあります。
こういうときの人間というものは、相手が自分と同じ人間だと感じられなくなっていますから、鏡自己対象機能や理想化自己対象機能のテクニックを駆使してもうまくいきません。
そんなときに有効なのが、双子自己対象機能のテクニックです。
双子自己対象機能のポイントは、相手が自分と同じ人間であることをわからせる点にあります。
「どうせ自分なんか」と非適応的な言動をとってばかりいる問題児的な人は、世の中のどの職場にもいるものです。
そういうケースは、こちらから話しかけてあげるのです。
たとえば、「私にも同じような経験があるよ」とか、「あなたを助けてあげられない自分が情けない」とか、自分も相手も同じ人間である感覚をもたせることで、関係の円滑化を図るのです。
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「豊かな推論」には落とし穴がある
物事を多面的に見たり、起こり得る可能性を多様に考えることは、推論トレーニングとして有効です。
しかし、ときにはそれが思考の拡散を招き、実際の問題解決の場面では必ずしも有効に働かない危険があることにも触れておかなければなりません。
というのも、思考の拡散には、結論を出しにくくするというややこしい欠点があるからです。
ビジネスの現場でいえば、思いつくままにあれこれと検討しているだけではいつまでたっても企画はまとまらず、商品開発もできません。
これを「ブレインストーミングの落とし穴」といいます。
問題やトラブルを解決するとき、最も重要なのは焦点を見定めることです。
ビジネスの場合なら、まずなんのためにその行為を行うのか、目的を明らかにすべきです。
資格試験などの場合は、相手が求めている答えや能力を明確につかんでいないと、いたずらに推論の方向が拡散することになりかねません。
これができていないと、結局はワンパターンの解答しか出せないことになり、非実用的です。
ブレインストーミングの落とし穴にはまらないためには、課題をより明確に設定することが大切です。
たとえば、職場の会議などを例にとれば、「ある商品の売り上げを伸ばす」という上位目的をはっきりさせることで、話の脱線や方向性を修正することができます。
常に上位目的を意識することで、販売の対象をどうする、値引きはどの程度までできる、宣伝はどうするなどというように、幅広く検討されるすべての推論を本来の趣旨からはずすことなく進めることができるわけです。
仮に「課題が曖昧になっている」と感じたときは、なにを求めているかを上司やまわりに直接確認するのもいいでしょう。
大きな失敗や時間のロスを防ぐには、そのほうが無難です。
ただ、日本ではこの種の態度をとることが、「生意気」と受け止められ、相手から嫌われる原因になることもあります。
その点は考慮しながら、確認は慎重に試みる必要があります。
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「集中力が続かない」はプラス思考に転換する
目標をもっていざ事を始めても、意欲が続かないことはよくあります。
本書のような自己啓発書を購入するようなやる気満々の人でも、現実に勉強を始めてみると、必ずしも思い描いていたとおりにいかないのがこの種の勉強の難しさです。
思うように勉強を続けられない状態には、ふたつのケースが考えられます。
そのひとつめは、勉強をしていると途中で嫌になったり、眠くなったり、テレビが見たくなったりする、つまり気が散って勉強が続けられない状態です。
こういう人は概して、集中力がない、根気がない、あるいは落ち着きがないなどといわれています。
かくいう私も、長時間集中を維持することができないという欠点をもっています。
一時間集中が続くことは滅多になく、すぐに席を立ってはコーヒーを入れ、新聞を読み、あるいはアイデアをしぼり出すためにあたりをうろつくということを繰り返しているわけです。
幸いなことに、いっぺんに長時間続けられないというだけで、やるべきことそのものはそれなりに継続できているので、そのような場合はあまり問題にしなくてよいと思います。
私の場合はもともとそのような傾向が強く、大学受験のときも、机から離れて歩きながら暗記ものの勉強をしたものでした。
そのほうが自分にとってはものを覚えやすかったのです。
このことは日本医大の大脳生理学者、故・品川嘉也先生が、体を動かしながら記憶することを「理にかなったこと」と認めていたくらいなので、決して悪いことではないと考えます。
じつは、私のような症状は、最近注目を集めている子どもの精神障害の一種、注意欠陥多動性障害に通じるものがあります。
アメリカでは低く見積もっても、子どもの5パーセントがこれにあたり、そのうちの5分の1程度は大人になっても障害が残るといわれています。
それほどひどいケースでなくても、大人になってもイライラしやすかったり、落ち着きがない傾向が強いとされています。
注意欠陥多動性障害の診断基準を読む限り、重症ではないにせよ、私もそれにあてはまっているように思います。
それゆえに、いまでもじっとパソコンに向かっていることができず、すぐに席を立ってしまいます。
ここで私がなぜこのような話を持ち出したかというと、病的に落ち着きがない人であっても、勉強を続けていくうえでそれほど不都合なことはないということをあえて強調したかったからです。
現実に私の場合、実社会ではそれなりどころかまわりの人以上に仕事はできているし、日常的な勉強も平均以上のものをこなしているという自負があります。
注意欠陥多動性障害の人は、落ち着きがないかわりにいろいろな新しいことに興味をもつので、歴史上の偉人のなかにはこれにあてはまるような人が多くいたと考えられています。
たとえば、小学校に通えなかったものの大発明家として名を馳せたエジソンや、日本では坂本竜馬がこれにあたるとされています。
この病気に限っていえば、短時間しか続かない集中力をトレーニングによって少しずつのばしていったり、人より短い注意時間をいかに活かすかが克服のポイントのようです。
一方、落ち着きのない人間でも本当に面白いものなら集中できることは多い(エジソンを見ればわかるでしょう)ので、勉強とは苦痛なもの、苦労すべきものという先入観をまずさっさと捨てることが先決ではないでしょうか。
頭がよくなりたい、勉強をしたい、知的な取り柄をもちたいという場合は、とにかくあれこれ試し、本当に関心のもてること、面白いことをなんとしてでも探すのが一番です。
勉強は本来、楽しいものであることが理想です。
そして、自分が楽しめる、興味がわくジャンルを探すことが、動機を維持し、勉強を続けるための近道のように思います。
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「アメ」と「ムチ」は上手に使えば効果バツグン
社会に出てから始める勉強のなかには、ビジネス上の必要に迫られて始めるものも少なくありません。
それが自分の興味や関心に沿うものであればいいのですが、あまり面白くないと思いながらも、「仕方なく」勉強を続けざるをえないこともあるものです。
このようなケースが前述の「集中力が続かない」ケースとちがう点は、問題が一日何時間勉強を続けられるとかいうところにではなく、ひとつのテーマについての勉強が長期間にわたって継続できないというところにあることです。
資格試験の勉強を始めたものの、一週間もしないうちに嫌になったり、勉強のつもりで読み始めた本がいつまで経っても読み終わらない、というようにです。
この状態は、勉強の成果そのものに大きな影響を及ぼすだけに、深刻な問題です。
いやいやではあっても、続けていくうちに理解がすすみ、徐々に成果があがってくるのが勉強というものです。
ところが、勉強そのものが続かないわけですから、理解は進まず、成果も上がらないということになります。
これはなんらかの手を打たなければなりません。
私自身、勉強は興味や関心のあること、楽しめることをやるに越したことはないと考えています。
その意味では、市川教授の調査結果に賛同できます。
しかし同時に、ある抵抗も感じています。
というのは、勉強の動機づけを本当に求めているのは、じつは、必要に迫られてあまり楽しいと思えない勉強をしなければならない人たちだからです。
プライドや競争心で勉強しているようではだめ、勉強によってメリットを求めるようだからだめなどという調査結果をつきつけられても、現実に問題に直面している人は立つ瀬がありません。
その意味で、教育心理学の立場からは内発的動機のほうが理論上好ましいのかもしれませんが、精神分析や精神医学の治療理論の流れ、国際的な教育政策を見る限り、現在は、内発的動機より外発的動機のほうを重視する方向に傾いていることは見逃せません。
性欲論や死の本能論でも知られる精神分析の祖・フロイトが、本能的なエネルギーの強さを説き、人間はその内なるエネルギーに動かされているのだという典型的な内発論者だったのは周知のとおりです。
ところが、その後の精神分析の理論では、このフロイトの本能欲動理論は否定的にとらえられるようになっており、逆に市川教授が否定的に取り上げている関係志向、自尊志向、報酬志向が人間の本質的な動機なのだと考えられるようになってきています。
つまり、精神分析理論では、教育心理学の理論とは逆に、内発的動機より外発的動機が重視されるようになってきており、私自身もこれを軽視すべきではないと考えています。
この傾向は、精神分析の理論にとどまりません。
精神医学の世界でも外発的な動機づけの人気が高まっています。
一時は捨て去られた行動主義の考え方が息を吹き返し、その考えに基づいた行動療法による治療法が注目されているのはその証左です。
行動主義というのは、心理学の世界で一時主流となっていた理論です。
心理学でありながら、観察対象を人間の「心」ではなく「行動」に置いています。
その客観性の高さから一時はかなりの人気を博していましたが、心を無視しているという批判が強まり、下火になっていました。
ところが、90年代以降、その行動主義に基づいた行動療法が再び注目を集めているのです。
患者の心の内面にアプローチしていくよりも、アメとムチを用意して行動を変えていくほうが短期間で治療が済むうえ、治る確率も高いという結果が得られているためです。
少なくとも、病的な人間を社会適応させていくためには外的な動機つけが重要なのだという考え方に、精神医学界全体が変わりつつあるように思います。
この考え方でいくと、やる気があるかないかよりも、「実際にやる」かどうかが問題となります。
やる気が出るまで勉強をせず、いつまでたっても勉強に手をつけられないというのは、とくに社会に出てからの勉強ではありがちなパターンです。
やることを決めて、実際にやることを先決とする行動療法の考え方は、そんな人たちが行動を起こすうえで大きな力を発揮するように思います。
なお、教育政策においても、日本では内発的な動機つけ理論に基づいて、生徒のやる気を引き出し、勉強を面白いものと感じられるように、ゆとり教育や総合的な学習の時間を設けるといった政策が取られていますが、諸外国の場合、むしろ行動主義に近い教育政策をとっています。
たとえばアメリカでは、小学校や中学校にも卒業試験が課されるようになっています。
試験重視、宿題重視の流れはレーガン政権以来のもので、政権が変わるごとにますます強化されています。
さらに1999年の年頭教書では、「教科内容を修得しないまま上の学年に上がることを許しておけない」と、エスカレーター式進級の中止まで打ち出しています。
試験重視、家庭学習重視で教育を立て直したのはアメリカだけではありません。
イギリスも1988年から、教育改革法に基づいて全国共通のナショナルカリキュラムを導入し、それに基づく全国共通テストを行っています。
その他、近年理数教育の充実で国力を立て直した国をあげたら、枚挙に暇がありません。
これらの国すべてに共通するのは、宿題や試験の多さであり、結局のところ、子どもには「ムチ」をもって勉強させるのが効果的という考え方に変わってきています。
当然「アメ」も用意されていて、学力エリートは徹底的に優遇されます。
その結果、いわゆるブルーカラーと知的エリートの賃金格差はどんどん開いている現実があります。
このような流れを見るかぎりは、日本の教育学者も、もっと外発的動機に注目すべきだといいたくなるところです。
私自身、市川教授の報告では有利とされる充実志向 − 訓練志向 − 実用志向の方向性を否定するつもりはなく、とくに社会に出てからの勉強では、そのような方向性で勉強する人が少なくないことは承知しているつもりです。
しかし、そのような動機がもてない場合、統計上は有効な学習方法を用いるために逆効果だとされていても、関係志向、自尊志向、報酬志向を動機づけにするテクニックもここではあえて推奨したいと考えています。
たとえば、動機が不確かなときは、最近の行動療法の考え方にしたがって、とにかくきちんとスケジュールをつくり、決められたとおりに勉強し、やらないことへの言い訳をしない姿勢が有効といえます。
多少なりとも勉強が進んでくれば理解も進むし、勉強がそれほど苦痛でなくなることは珍しくありません。
たとえ予定どおりにできない日があっても、そこで頓挫するのでなく、翌日はまた勉強に戻るという態度が確実に勉強を進めていくのだということを、あらためて強調しておきたいと思います。
そうはいっても、動機がしっかりしていないと勉強を続けるのは難しいという人も少なくないでしょう。
そんなときは、外発的動機づけの理論をテクニックとして駆使するのが効果的です。
これらの方法には、勉強をすればいいことがあるから行うという単純な報酬士高を使ったアメのやり方や、他者を勉強の動機にする関係志向、自尊志向を満たすやり方などがあります。
また、勉強をやらないことに対するムチを用意するということも有効です。
しかし現実にアメとムチを使うとなるとなにかと不都合も生じるので、イマジネーションを武器にするのもひとつの手です。
「ビジネス心理戦」に勝ち抜く自分、問題解決能力にすぐれた変身後の自分の姿を思い浮かべる一方で、現状から這い上がれない自分、リストラされたみじめな自分を想像するという具合にです。
ただし、想像上のムチをあまりふるいすぎると、将来に対する不安が強くなりすぎて、かえって勉強の邪魔になることがあるかもしれないので、要注意です。
じつは、このやり方は私自身もよく使っています。
どんどん頭が悪くなって落ち目になったり、原稿の締め切りに間に合わずに仕事がこなくなる自分を思い浮かべながら自らに鞭打つことで日々精進できていると考えられるので、その効果のほどは保証できます。
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苦手な上司も怖くなくなる感情コントロール術
人間の思考は想像以上に感情状態に左右されるものです。
したがって、自分が陥りやすい感情のパターンを知ることは推論の歪みを矯正するうえで重要なポイントとなります。
そもそも人間の思考には、それぞれの人がもつパターンのよぅなものが存在しています。
感情に大きく左右されるのもそのパターンの一種で、こうした推論の歪みの仕組みを知って上手に対処していくことは、思考のみならず気分の改善、ひいては対人関係能力の向上にも結びつけることができます。
問題のある思考パターンをあらためるため、最近の認知療法の考え方では、とくに「自動思考」の矯正を重視しています。
自動思考というのは、もって生まれた性格、過去の経験、さらには、そのときどきの感情などに影響された無意識のうちに行われる思考のパターンです。
たとえば、日頃から上司に快く思われていないと感じている人なら、上司に呼ばれた瞬間に、「またしかられる」「リストラ話かも」などと無意識に考ぇてしまうことになりがちです。
ときにはなんの根拠もなしに無意識のうちに偏った推論を始めることもあるので、自動思考というのはなかなかやっかいな問題なのです。
こういうときは、認知パターンに歪みがあってもそれを疑えない状態に陥っています。
したがって、その偏った思考が人を感情的な反応、不適応な対人行動に走らせてしまうことが往々にしてあるのです。
このようなまわりとの乱轢を招かないためにも、偏った自動思考はいち早く修正する必要があります。
自動思考の歪みを修正するには、DTR(=非適応的思考の記録)と呼ばれるテクニックが効果的です。
自分の感情状態とそのときの自分の考えを記録する方法で、あとでこれを見返すだけで、自分の思考パターンがいかに感情に左右されているかを知ることができます。
このテクニックを利用するときのポイントは、自動的に認知が行われたと思われた瞬間、頭に思い浮かんだことをすぐに書き留めることです。
そして、それが起こると思った確率を「100パーセント」「80パーセント」などというふうに、数字で評価してみるのです。
この方法のメリットは、紙に書くことでその評価が正しいかどうかを冷静に考えられる点です。
人間は少しでも冷静になることができれば、「悪いことが起こる確率100パーセント」とは、そうそう考えないものです。
すなわち、他の可能性があることの自覚につながるというわけです。
これは、人間が情報を発信するとき、より客観的、冷静になろうとする心理を利用した、いわば悲観的思考の修正テクニックです。
こうしたメタ認知的な感情や思考のモニタリング法を習慣づけることは、問題のある偏った自動思考の内容を妥当なものにしていくうえで有効です。
さらには、感情状態を安定させ、対人関係能力の向上にも生かすことができるので、ぜひ活用したいものです。
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「推論の偏りを修正すれば、もう判断ミスは怖くない
どんな人にも自分の身を守ろうとする本能が備わっています。
そのようなとき、その人の推論もまた、ともすれば自分の立場に都合のいいように行われるものです。
あるいは、その人の感情や経験が独特の思考パターンを形成し、さまざまな認知の歪みを生じることはよく知られています。
頭のいい人、すぐれた人などと高い評価を受けている人でも、判断ミスはだれにでも起こる不可抗力。
メタ認知を使って修正すれば問題はないそれは同じです。
自分がすばらしいと思う新たな知識、感情、立場など、さまざまな要素によって思考が歪められることは、じつはよくあることなのです。
その結果、正しく豊富な知識を身につけていても、推論の方向性が狂ってしまい、まわりにとっては害にしかならないことが応々にしてあるのです。
こんなとき、自分の感情の状態をモニターし、「落ち込んでいるから悲観的考え方をしているのではないか」「この考えは自分の立場に有利なように偏っていないか」などと冷静に自問できれば、推論のバリエーションもはるかに豊かになります。
それを可能にするのが「メタ認知」です。
誤った推論を矯正するメタ認知は、豊かな推論を行うこと以上に高度な能力を要します。
自分の認知パターンを客観的かつ冷静に、上から見るメタ認知の能力を身につけるには、基本的なモニタリング技術をマスターするのが最も有効なトレーニング法となります。
メタ認知の基本は、なんといっても自分の認知に対する自問を欠かさないことです。
自分のなかにメタ認知を行うもう一人の自分をもつことができれば、推論の偏りはかなり修正できます。
自問すべき内容は、
「十分な知識をもっているのか?」
「思考が一面的なステレオタイプになっていないか?」
「人の意見に影響されすぎていないか? 日分の主張をもたずにただの受け売りになっていないか?」
「感情に振り回されていないか?」
「自分の立場に有利な考え方になっていないか?」
「過去の経験によって培った認知パターンにしぼられていないか?」
など、さまざまな要素があります。
問題解決プロセスやディスカッションにしてもそうですが、あらゆる危険性を自問する習慣を身につけるべきです。
とくに知識や人生経験の豊富な人、高学歴の人は、推論に影響を与える要素をたくさん備えている分、自問の必要性も人一倍であることを自覚してください。
そうすれば「知識があるだけで創造力のない無能人間」と許される危険を回避できるわけですから、思考パターンを自問することは、それ自体たいへん意義があることなのです。
認知心理学では、思考を歪めるもうひとつの重要な要因として、「スキーマ」の存在をあげています。
スキーマとはいわゆる知識の一種で、人が経験によって身につける知識のモジュールと定義されます。
人間は、日々の生活のなかでさまざまな情報を認知するとき、それを既知の知識の枠組みに照らして解釈する傾向があります。
たとえば、ここに六本の足をもつ小さな生物がいたとします。
その生物自体ははじめて見るものでも、私たちはそれを昆虫の=桂であろうとすぐに認識できます。
それは、「足が六本イコール昆虫」というスキーマが頭のなかにあるおかげです。
このように、自分のなかに正しいスキーマをつくることは推論作業の省略を可能にし、問題解決のスピードアップをはかるメリットがあります。
その一方で、思考をステレオタイプに陥らせる一面もあるので、じつは注意が必要なのです。
前出のゼックミスタとジョンソンは、スキマを用いた人間の情報処理過程には、以下の特徴があると主張しています。
- (1)スキーマと−致しない情報より一致する情報に注意を払う
- (2)スキーマと一致しない情報が受け入れにくくなる
- (3)スキーマと一致する情報のほうが一致しない情報より記憶しやすくなる
- (4)スキーマと一致するように記憶を歪ませることがある
繰り返しになりますが、スキーマをもつことはそれ自体悪いことではなく、むしろ人間の情報処理機能を高めるために当たり前に生じる適応現象と考えるべきです。
ただ、これまでに経験したことのない複雑な問題解決の場面にまでそのまま応用できることはほとんどないので、その点は注意しなければなりません。
たとえば、売り上げが伸び悩んでいるなどビジネスでうまくいかないときは、これまでの営業方法、セールスプロモーションのスキーマが当てはまらなくなっている可能性が高いと見るべきです。
そうした自分なりのスキーマのパターンを知り、通用する場面と通用しない場面で推論パターンを変えるべくモニターしていくことも、有効なメタ認知のテクニックなのです。
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もっと言いたいことが言えるようになるプレゼン上達トレーニング
ニ一世紀型「できるビジネスマン」の理想モデルの姿を示し、そこに近づくためのトレーニング法をこれまでは総論的に紹介してきました。
これらのノウハウを効果的に生かすには、そこからさらに一歩進めて、今後何をどのように勉強していくべきかをより明確にイメージする必要があります。
ここから先は、ビジネスマンとして成功するために不可欠である具体的な能力、さらには大人の勉強を進めるためのより実域的なテクニックなども含め、いわば各論的な部分に触れていくことにしましょう。
せっかく身につけた推論能力や問題解決能力も、それを表現することで相手に伝えなければ意味をもちません。
ビジネスの現場ではなおさらのことです。
そこでここでは、プレゼンテーション能力に磨きをかける方法について解説することにしましょう。
プレゼンテーションひとつとっても、人それぞれに上手下手はあります。
この種の能力は、これまで受けてきた教育や、読書量、あるいは生まれつきの才能に規定されるものと信じて疑わない人も少なくありません。
しかしながら、上司やまわりに「仕事ができる」と思わせる程度の表現力を身につけるのは、実際にはそう難しいことではありません。
ポイントをつかみ、テクニックに磨きをかけるべく努力する価値は十分にあるのです。
プレゼンテーションがうまくなる手っ取り早い方法は、型にはまった流れの練習を繰り返すことです。
一見するとつまらないもののように思えますが、これ以外の方法でテクニックに磨きをかけるのは難しいように思います。
ここでいう型とは、
- (1)最初に問題提起をするか、ないしは結論を述べる。
- (2)次に背景情報、解説を行う。
- (3)最後に結論を述べる。
という流れです。
練習そのものは意外に簡単なものですから、ちょっと意識するだけでまわりの人への説得力ははるかに増します。
しかし、このテクニックに磨きをかけるべくトレーニングに励んでいる人は、不思議と少ないように思います。
この基本を押さえたうえでさらに次の二点に注意してトレーニングすれば、あなたのプレゼンテーションは格段に進歩するはずです。
伝えたいポイントを意識する
たとえば紙に書いた文章なら、相手は「わからなければ読み返す」ということもできます。
しかし口頭発表を聞くシチュエーションが基本となるプレゼンテーションでは、そうもいきません。
したがって、最も強調したい結論部分を早めにはっきりと伝えて、話のポイントをあらかじめつかませるやり方が効果的です。
そうすることで、その後の背景説明なども、聞く側にとっては頭に入りやすくなるわけです。
時間を決めて練習する
話が冗長にならないように心がけてトレーニングしましょう。
長い文章を書くのはおっくうだが、話し出したら止まらないというタイプの人は、世の中に意外に多いようです。
本人は気持ちよく話しているのでしょうが、これでは聞かされる側はたまったものではありません。
日常会話ならまだしも、そもそもプレゼンテーションでは原則的に発表時間を指定されていますから、簡潔に話す能力が問われるのです。
学会発表などでも、与えられた時間どおりに話すことは場数をこなした研究者にとっても本当にやっかいなものです。
いざというときとまどわないためにも、五分なら五分、三分なら三分とあらかじめ時間を決めて、時間内に要点が伝わるように話すトレーニングを日常的に行うことが必要です。-----
EXTENDED BODY:
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批判的読書法で「複眼思考」を磨く
すぐれたビジネス思考力の持ち主の理想モデルを考えるうえでヒントになる理論をひとつ紹介しておきましょう。
人間の思考パターンの分類方法に、「単眼思考」「複眼思考」という分け方があります。
東京大学の苅谷剛彦教授が主張するもので、物事の一面にだけ目を向けてひとつの正解を求める思考を単眼思考、物事の多様な側面を認めて多様な視点でものが複眼思考で脱ステレオタイプ。
メタ認知力獲得トレーニングとしても有効。
考えられる思考を複眼思考と呼んでいます。
自分の思考パターンがこの単眼思考と複眼思考のどちらに近いかは、その人のビジネス思考力をはかる上でひとつの目安になります。
結論からいえば、どのような状況でもステレオタイプの単眼思考しかできないようでは、まわりからの評価を高めることはできないのです。
一般に、単眼思考の人の場合、世間の常識にとらわれる傾向が強いといえます。
多くの人がこの単眼思考に陥りやすく、苅谷教授が著した『知的複眼思考法』(講談社刊)という本にもそれを示す興味深い実験が紹介されています。
それによると、苅谷教授は、学生たちにあるビデオを見せ、解答用紙にそれについての簡単なレポートを書かせたそうです。
そして、解答用紙の欄外にA、B、C、Dと適当なアルファベットを書いて学生たちに返却した後改めて感想を求めたところ、Aと書かれた学生は「思ったよりできた」と喜びを表現し、CやDの学生は「あまりうまく書けなかったので」などと、たいがい言い訳を始めました。
その後、アルファベットは適当につけたものだという種明かしをすると、学生たちは一様にきょとんとしていたといいます。
つまり、このときほとんどの学生は、解答用紙に書かれたアルファベットを成績の評価と考えていたわけで、それ以外の何か別の印であるかもしれない可能性をまったく考えられない単眼思考に陥っていたわけです。
この話は決して人ごとではなく、どんな人でも陥りかねない、思考パターンのある種の危険性を示唆しています。
現実のビジネスの場面でも、ごく常識的な単眼思考でしか物事を見ることができず、判断を誤り、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまったということはよくある話です。
この種の失敗を避けるには、多種多様な側面から物事を考えることができる複眼思考に磨きをかけるしかありません。
それはすなわち、ひとつの問題にひとつの解決しか念頭に置かない、オール・オア・ナッシングの検討方法をやめるということです。
これはメタ認知の獲得にもそのまま通じるものです。
ちなみに、苅谷教授は複眼思考に磨きをかけるトレーニング法のひとつとして、読書時に著者の主張を鵜呑みにせず、疑問をもって、簡単に納得しない「批判的読書法」を提唱しています。
本の段落ごとに「鋭い」「納得できない」「例外がある」と評価を書き込む方法で、知識を吸収する場である読書が推論トレーニングの場に転換できるというわけです。
より日常的で手っ取り早い方法として、私ならば、いろいろな立場の人の心境で同じ事柄を見てみる方法をすすめます。
たとえばプロ野球のドラフト制度についてでもいいのです。
人気球団の立場、不人気球団の立場、ファンの立場、選手の立場など、多面的に考えてみるだけで、物事の多面性を理解する訓練になります。
ポイントは、単眼思考に陥りやすい、自分にとって都合が悪いケースほど、意識して複数の解決策を考えるということです。
このトレーニングを積み重ねて、本当に必要なときに世の常識に流されない複眼思考ができるようになれば、ビジネス思考力は磨かれ、問題解決能力が高められるにちがいありません。
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「独創性」は知識の蓄積でつくり出せる
優秀な人間が必ず備えていると考えられている能力に、すぐれた独創性や創造性があります。
しかし、ビジネスでなにがしかの成果を上げるために、「独創性」や「創造性」は本当に必要なのでしょうか。
あるいは、「独創性」や「創造性」とはいったい何でしょうか。
実際の成功者を例に考えてみましょう。
ウインドウズというOSソフトで世界を席巻したマイクロソフト社のビル・ゲイツのケースです。
彼の大成功は、彼自身の卓越した「創造性」や「独創性」によるものでしょうか。
判断が難しいところではありますが、現実の問題として、彼がやったことは、それまでマッキントッシュが取り入れていたパソコンの操作スタイルを、世界市場の主流だった1BMコンパチブルマシーンに導入したにすぎないという見方もできるのです。
そうなると、マイクロソフト社の成功は、単純にビル・ゲイツの独創性や創造性のたまものと考えることはできないわけです。
私個人の意見としては、このケースはむしろ、過去にどのようなものが消費者にうけていたかという知識、コンピュータ業界のマーケティング知識、自らのプログラミング知識などを用いて、ヒット商品の企画を導き出した好例と考えます。
一口に独創性、創造性といっても、それがどういう能力を指すかは、定義が難しい面があります。
ビジネスでも学問でも、無から有を生み出すことは実際にはほとんどありえないのです。
じつは、独創性や創造性を育てる教育は、その必要性を訴える人たちによってこれまでいろいろな形で試みられてきましたが、残念なことに、いまだに有効な方法は見つかっていません。
諸外国ではどこの教育現場でも、独創性を「創り出す」「育てる」というより、むしろ独創的な人間の独創性を「引き出す」「壊さない」ことに主眼を置いているようです。
つまり、「独創性や創造性を育む」といっても、せいぜいがその個人の得意分野についてハイレベルなカリキュラムを与えたり、ひとつの問題に対して可能な限りさまざまな形で答えを用意させる、そして風変わりなアイデア、意見を決して押しっぶさないというやり方しかしていないわけです。
逆に、その程度の教育的配慮しか行っていないにもかかわらず、すぐれた独創性・創造性があると評価される人が現実に多数育っていることは、注目に値します。
独創性や創造性の定義、そしてこれをどう育んでいくかという問題は、ノーベル賞級の研究者を例に考えてみると明快な答えに行き着きます。
近年、科学者の世界では、大学院レベルの高い教育を受けていない人が高評価を受けるケースなどほとんどありません。
これは独創性・創造性といったものが、本来は無から有を生むような「ひらめき」ではなく、基礎的な知識を積み上げ、その上にさまざまな形で推論を行った先に成り立っていることを意味していると考えられます。
そんなことから私は、世間で蔓延しているいわゆる「独創性・創造性幻想」にあまり振り回されるべきではないと考えています。
ビジネスの世界でも同じことです。
研究者の世界とちがっていることは、学歴のない者が成功を収めるケースが現実に多々あるということです。
彼らは人があまり考えていないことを考え、それをビジネスとして構築し、「独創的な発想をもつ人」として成功しています。
実際のビジネスにつながっていなくとも、要は「発想」があるかどうかです。
たとえば、日本中がこぞってIT時代に突入しようとしているとき、これまで主流だった製造業のなかで新たなシステムを構築して活路を見いだしたり、高齢者が多い社会の特性を生かして高齢者産業のリーダーをめざすという発想に立つだけでも、ビジネスの世界では十分に通用します。
その背景に、それぞれの業界事情を知り尽くし、さまざまな推論を行ったうえに導き出された成功への方法論があれば、いうことはありません。
ビジネスで結果を出すことは、ノーベル賞級の研究に比べればそう難しいことではありません。
というのも、結果を出すために必要な独創性や創造性は、知識を蓄え、推論を行う思考プロセスを身につけるなかでその幅を広げていくことが可能だからです。
ビジネスで必要な独創性や創造性は、だれでも日頃のトレーニングで高めていくことができるのです。
そして、それが「大人の勉強法」の一番の特徴でもあります。
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ビジネスマンのための資格取得必勝テクニック三原則
資格を取得したいという方のために、私が提唱する必勝法を三つ、ご紹介しましょう。
その第一は、過去問入手です。
大学入試などを含め受験全般にいえることですが、過去問は勉強の方向性を見極めるうえで最大の武器になります。
常識的には、一度出た問題が再び出ることはないと思いたくなるところですが、実際に過去問をチェックすればわかるように、試験問題には意外なほどある一定の傾向があるものです。
自動車免許の取得試験を思い起こしてください。
分厚い法令集を読んで勉強するより、対策用の問題集を一冊解くほうがはるかに理解が進むし、合格に役立ったはずです。
資格によって難度は異なるものの、基本原則は同じです。
過去問を何年分も解いてその解答を覚えるだけで合格レベルに達するなどということは、資格試験では珍しくないのです。
これは資格試験というものの性質と深く関係しています。
そもそも資格試験は、その資格を与えるにふさわしい知識や技能を有しているかどうかを問うものであって、奇抜な能力や独創性などは必要ありません。
たとえば、司法試験を突破した裁判官が突飛な判決を出したとしたら、社会にとっては迷惑なだけです。
それは裏を返せば、資格取得の必勝法は、どのような知識、技能が要求されているかを理解することにあるといえます。
身につけるべき知識や能力を象徴している過去問を見るのが一番の早道というのは、号っいうわけです。
なお過去問は、これから受けようとする資格が自分に合ったものか、なおかつ合格の可能性があるかを判断する基準ともなります。
過去問にチャレンジしてみたらそこそこ解けた、解答集や解説書がそこそこ理解できる、という場合は、それは自分にとって挑戦するに値する資格である可能性があるといえます。
資格取得の第二の必勝法は、優秀な先達探しです。
とくに短期間で試験を突破した要領のいい先輩を見つけてアドバイスを請うことは、成功への近道となります。
自分はそのような優秀な人の真似はできないのでアドバイスなど役に立たない、と考える人もいるかもしれません。
しかし、それは明らかに誤りです。
短期間に合格した人というのはまちがいなくその資格試験のコツをつかんでいる人です。
合格のために何が必要で、何が無駄かをよくわかっているはずなので、そのノウハウを利用しない手はありません。
短期合格者ではなくとも、成功者からあれこれと話を聞くことで、どの解説書や問題集がわかりやすく実用的なのか、どの予備校がいいのか、何が必要で何が無駄かなどのノウハウはつかむことができます。
あるいは、その人が資格を取得してから数年経っていれば、その資格が本当に役立つものなのかといった話も聞くことができるかもしれません。
「友人が合格したから自分もその資格を」などという考えは主体性がないと思われがちです。
しかし現実にはそのような人は合格に近いポジションにいるわけで、その資格が将来を保証してくれたり、ビジネスの幅を広げるものならば、絶好のチャンスと考えるべきです。
しかしながら、こうして先達から引き出したノウハウも、すべてを癖呑みにしてそのまま使うのはやはり危険です。
あくまで、自分に合ったテクニックを取捨選択すべきでしょう。
根掘り葉掘りいろいろなことを聞き出し、それを自分のなかで整理したうえで活用することです。
なかには、どうしても合格者の知り合いを見つけるのが困難という人もいるでしょうが、対策塾や予備校を利用したり、合格体験記のようなものに目を通す方法もあります。
ただし、対策塾の講師は本音を隠すこともあるし、合格体験記は編集段階でかなり修正されるのが常です。
その場合の情報は、直接情報よりもかなり質が落ちることは知っておく必要があるでしょう。
第三の必勝法は、参考書選びです。
先達のアドバイスにしたがっておすすめの参考書や問題集、解説書を見つけることも大事ですが、勉強の効率はやはり相性に大きく左右されます。
推薦された本に不満があるときは、すぐに自分に合った参考書に替えましょう。
そのときのコツは、自分で読んで理解できるものを探して選ぶことです。
予備校や対策塾に頼る場合は別にして、わからないことを聞ける相手がいないのがこの種の勉強の宿命です。
理解できないことは記憶にも竣らないわけですから、読んでわかる参考書の選択は、資格取得の生命線となります。
参考書選びのふたつめのコツは、過去問勉強法に対応できるかどうかのチェックです。
必要な知識や技能を象徴する過去問と対比してみて、もしも出題範囲を網羅していなかったリ、その逆に広くカバーしすぎている、自分がわからない部分の解説がないといったものは、実際に勉強を行うときに不都合を感じるでしょう。
三つめは、その世界で定評のある参考書か否かです。
高い合格実績を誇る予備校や対策塾の人気講師が書いたものは、概して評判が高いといえます。
そのような人たちの場合、本を出すことは宣伝的な意味もあるので、すべてのノウハウを開示していない場合もなきにしもあらずです。
それでも、人気があるだけに教え方もわかりやすいことが多いのです。
参考書を選ぶ能力に自信がないときには、ベストセラーを選ぶのは確実で無難な方法なのです。
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行き詰まったときには「成功の法則」から学べ
やる気もあるし、勉強もしているのに結果がついてこない、というときがあります。
そういうときは、成功者のテクニックに学ぶことがひとつの有効な解決法となります。
私自身、東大に現役で合格できたり、いまこうして本を書く仕事ができるようになったのも、振り返ればまわりの「できる人」に学んだり、できる人のノウハウを盗んだりしたことに負う部分が大きかったように思います。
私の場合、高校が受験の名門校だったので、同級生から学ぶ技術の質もたしかに高かったように思います。
そのなかで、「できる人」をよく観察し、そのテクニックを盗み、それを自分が試してみることで効果を確認するといぅプロセスを、比較的スムーズに行うことができました。
しかし、まわりにそのような成功者がいない場合もあります。
そこで三つのアドバイスをしておきましょう。
ひとつめは、「できる人」に近づくとき、お金や時間を惜しまないことです。
自分が「この人はすごい」と思える人は、たとえ身のまわりにいなくても、著名人のなかに見つけることはできます。
その人の著書を読んだり講演を聴くことも、テクニックを盗む絶好のチャンスになります。
私も経験していることですが、本を出すときは、売れるものにしたい、自分をよく見せたいという気持ちが働いて、自分のもっているノウハウを正直にさらけ出してしまうものです。
成功者の著書などは自分とは無縁のものだと決めてかからず、使えるエッセンスを見つけるつもりで読んでみるのです。
同じ理由で、評判のいいセミナーを聞きにいくのもいい方法といえます。
大学受験の際、有名な講師の講義を聴いてから苦手科目の成績が飛躍的に伸びたという類の話は実際にもあるので、評判のいいセミナーから学べるものは多いはずです。
時間を憎しまず出かけてみるべきです。
ふたつめのアドバイスは、「できる人」のいうことを信じることです。
その人からいいヒントを見つけても、「この人と自分は頭の構造がちがうから」と真似をすることさえあきらめてしまっていては、いかなる能力も身につけることはできません。
真似したところで失うものは、ほとんどの場合、本の代金かセミナーの受講料程度のはずです。
失うものよりも新しい試みから得られるメリットのほうが大きいでしょうし、「成功したらめっけもの」ぐらいの軽い気持ちで受け入れてみましょう。
そして三つめのアドバイスは、そうやって見つけたノウハウを、実際に自分で試してみることです。
私の勉強法の本を何冊も買って読んでいながら、実践もせずに「成績が伸びない」と嘆いている人もいるようですが、これでは笑い話にもなりません。
また、いくらいい方法に思えても、相性によって効果が上がらないことも考えられます。
能力の優劣とは関係ないところでノウハウとの相性があるのはたしかで、これは試してみなければわからないものなのです。
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年をとっても記憶力は高められる
学歴社会が崩壊しつつあるなどと聞くと、知識をもつこと自体が悪いことのように曲解してしまう人がいます。
すでに確認したように、これは明らかなまちがいです。
推論やメタ認知を活用するベースとなるのは知識です。
そこで、ここでは、記憶のメカニズムに触れつつ記憶力アップのテクニックに迫っていきましょう。
人間は日々さまざまな体験をし、本や新聞、テレビなどを通じて多くの情報と出会います。
生きていくことそれ自体が知識を吸収することの繰り返しともいえますが、残念なことに、毎日見聞きするこれらの情報のすべてが知識となって定着しているわけではありません。
情報を推論の材料として「使える知識」とするには、記憶するという作業があらためて必要になってくるのです。
学校で習う社会科のように、知識の多寡を問う科目で成績が悪いケースを検討してみると、およそふたつの理由が考えられます。
ひとつはあまり勉強をしていない、入力情報自体が少ないケースで、これは論外です。
もうひとつは、勉強はしているものの記憶力が悪くて覚えられないケースです。
一般的に、記憶力のよしあしは、生まれつきの要素が強いと考えられています。
個人差が大きいことはたしかですが、概していえるのは、二十代ころをピークに、徐々に衰えていく傾向があることです。
たとえば、アメリカで行われたある記憶テストでは、こんな結果が出ています。
それによると、17歳から29歳を母集団とした得点分布を基準とした偏差値で40以下になるような点しかとれなかった人の割合を見ると、30代が26パーセント、40代30パーセント、50代41パーセント、60代で52パーセントでした。
しかしこの種の記憶テストは、10分かそこらの間、どの程度のことを覚えていることができるかを見るものです。
使える知識として長期間記憶にとどめておく能力は、脳がその情報をどう処理していくかという能力とも深く関わってきますから、実験の結果がそのまま記憶力を物語っていることにはなりません。
しかし、脳の基本的な機能としての記憶力が、年齢とともに低下していく宿命は自覚しておいていいでしょう。
古典的な心理学モデルでいえば、記憶に関する仕組みは、
- (1)記銘プロセス(情報の入力)
- (2)保持プロセス(情報の貯蔵)
- (3)想起段階(情報の出力)
の三段階に分けることができます。
それぞれの段階の特性を知ることで、記憶がうまく機能するテクニックを駆使すれば、記憶力は年齢にあまり関係なく高めていくことができます。
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未来不安はそのまま「やる気」に転換できる
概していえるのは、自分の能力を向上させる勉強の必要性を最も強く感じているのは、日々の生活のなかで自らの能力不足を痛感しているタイプの人たちだということでしょう。
リストラなど現実の問題に直面しているケースもあるでしょうし、将来が不安で勉強どころではない人もいるかもしれません。
不安は人間にとってあまりいいものでないように受け止められがちです。
しかしその反面、不安を感じているときのほうが間連解決の手段を講じる動機づけが行いやすく、「勉強をやらねば」という強い意欲にもつながるプラスのメリットがあることも見逃すことはできません。
一般的に、人間の不安の表れ方は、(1)予期型不安、(2)自我理想型不安、(3)超自我型不安のおよそ三つに大別されます。
それぞれを簡単に定義しておくと、以下のとおりです。
(1)予期型不安……人事面での冷遇や営業成績の伸び悩みなど、自分自身の 評価が低い現状から暗い将来までを予期し、思い悩むような不安状態
(2)自我理想型不安……理想としている自分の姿を強く思い描いているが、この理想と現実とのギャップを痛感して思い悩んでいる状態
(3)超自我型不安……営業成績が自分の期待しているより悪いなどの前提があって、上司やまわりが自分を見下す姿を想像したり、自分で自分を責めてしまって、なにか悪いことをしたような罪悪感を感じながら思い悩んでいる状態
こうした不安を抱えて思い悩んだ経験は、だれでも一度はあるはずです。
不安を抱いて思い悩むことそれ自体は恥ずかしいことではありません。
むしろその後どのような意識でどのようなアクションを起こすかのほうが大切なのです。
それでは、抱いた不安をどのように大人の勉強のモチベーション維持に利用できるのでしょうか。
予期型不安の場合は、現実的な解決方法に目を向けるチャンスに転換できます。
人事上の評価が低い、営業成績が悪いなどの現状を自覚すると、給料が下がらないか、リストラされないかと未来を想像して不安が生じるのは当然です。
1番まずいのは、予期不安を抱えているうちにどんどん悲観的になり、それがさらにひどい予期不安を生むことです。
これを予想される姿を現実のものにしないためになにをすべきかを検討する機会にするわけです。
それには、悲観的にも楽観的にもならず、いま解決すべき問題はなにかを盲華に受け止めることが大切です。
理想と現実のギャップに悩まされる自我理想型不安なら、「こんな自分は自分ではない」と一念発起する原動力に転換できます。
「自分はこうあるべき」とする自我理想は、もともと自分の行動や考え方を方向づける「姿なき教師」のようなものです。
これをプラスに転じさせて利用することは、そう難しいことではありません。
反面、自我理想には、「自分はかくあるべき」という理想が強すぎるとそれに振り回されて現実を見失い、まわりからの的確なアドバイスまで受け入れられなくなったり、ちょっとした成長を成長と考えられなくなる危ない一面もあります。
しかしながら、こうした落とし穴を理解し、勉強の必要性を痛感しながら勉強を始める原動力にするなら、なんら問題はないでしょう。
三番目の超自我型不安は、自我理想型不安と同じ系統のものです。
根本にある善悪を含めた価値観が、親の影響など自分が育ってきた環境に左右される点は同じです。
しかし、不安を感じる状態が、「こうあるべき」と理想で考えるのが自我理想型不安、「こうしてはだめ」と罪悪感で考えるのが超自我型不安です。
両者の不安の根っことなる部分は同じでも表れる形はちがうので、ここでは便宜上、分類して考えています。
この超自我型不安は、根本にある個人の価値観がどんなものであれ、悪いとされることをさせない、道を踏み外させないという意識で自分を監視しているからこそ生じるものです。
最近は簡単に犯罪に手を染める人が目立ちますが、こうした例外的ケースを別にすれば、いまに至るまで警察にお世話にならずにまともな人生を歩むことができたのは、まさに超自我型不安があるからだと考えられなくもありません。
なお、この超自我型不安の場合も、予期型不安や自我理想型不安と同じく、マイナス思考に陥ると不安が新たな不安を呼ぶ悪循環に陥りかねないという怖い一面があります。
生じた現象を必要以上に悪く考えたり、あまりにひどい状態なら認知療法などを行って修正する必要もありますが、そこまでひどくなければ、こんな自分になったら恥ずかしい、こんな自分になったら情けないと思って、不安を勉強の動機づけに利用することは可能なはずです。
人間の不安状態は、マイナスをマイナスばかりに感じなくするなど、認知パターンを意識的に変えることでも解消させることはできます。
しかし、度が過ぎると現実がまったく見えなくなるため、人間が建設的に動けなくなってしまうのです。
少なくとも、今後もビジネスの世界で生きていくつもりなら、生じてくる不安はスキルアップのための努力の原動力にすべきです。
そして、努力を通じて結果を出しながら、一つひとつ生じた問題を解決していく好循環を築くのが、まさに現代の理想的な人生の姿のように思います。
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「メタ認知」をビジネスに活用する方法論を学べ
メタ認知を身につけることが「ビジネス心理戦」に強い、すぐれたビジネス思考力にそのまま結びつくことはおわかりいただけたと思います。
ここで、ロヨラ大学のユージン・ゼックミスタ教授とジェイムス・ジョンソン教授が紹介している興味深い思考の方法論にも触れておきましょう。
クリティカル・シンキングと呼ばれるそれは、自らの知識をもとにただ漫然と推論を行うのではなく、システマチックに問題解決の方法を導き出すための方法論です。
その大きな柱は、
- (1)問題に対して注意深く観察しながらじっくり考える態度
- (2)論理的な探求法や推論に関する知識
- (3)これらを適用する技術
の三つです。
なかでも最も重要とされるのは(1)の態度です。
このことは、心がけを変えれば、「ビジネス心理戦」に強くなり、「ビジネス思考力」にすぐれた人に変身できる可能性がどんな人にもあることを示唆しています。
むろん、(2)の方法論に関する知識や(3)の適用技術も、メタ認知を身につけるためには重要なファクターです。
受験勉強を例に考えても、参考書や問題集の問題一つひとつに、いろいろな場合を想定してじっくりと慎重に取り組む態度(1)は必要ですが、それでは時間が足りなくなってしまいます。
そのため、志望校の過去の問題を分析して対策を立てる工夫(2)をしたほうが、不要なところを飛ばし、必要なところの重点的学習ができるので、よい結果に結びつくことが往々にしてあります。
同じ努力をするにしても、方向性によって得られる結果も変わってくるわけです。
その意味で、思考力に磨きをかけるには多くの勉強法を知識として知る必要があります。
そして、数多くのパターンのなかから推論を用いて最も効果の高い方法を選ぶ力を高めていけば、目の前に山積した問題やトラブルの解決は容易になるでしょう。
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人脈の豊かな人は「共感能力」がちがう
精神科医の立場でいわせてもらえば、人づきあいのいい人のほうが、概して自分の感情コントロールが上手で、他人の感情もよくわかっています。
実際のビジネスの場面でも、不安や抑うつに長期間悩まされるようなプロジェクトに臨まなければならない機会は多いようですが、そんなとき頼りになる他者がいるか否かで、ビジネスの結果も、そこに至るプロセスも大きく変わってきます。
現在最も人気のある精神分析学の領域といっていい自己心理学の祖、ハインツ・コフートは、こんなことをいっています。
人間の発達目標は、親への依存関係から自立していくようなものではなく、親や別の人間との関係を未熟な依存から成熟した依存に変え、まわりの人間をうまく利用できるようにすることだと。
つまりは、対人関係能力を高められるか否かは、まわりと成熟した依存関係がもてるかどうかにかかわっているというわけです。
まわりとの関係は、依存が過度であったり一方的でなく、相手に何かを望んだり期待するかわリ、相手が望むものをわかってあげたり満たしてあげたりする形がベストです。
互いの欠点、弱点を補い、困ったときにはいつでも助け合える関係、それがコフートのいう「成熟した依存関係」です。
こうした良好な関係をまわりと築くためのキーワードが、「共感」です。
この共感についてコフートは、代理内省、つまり「相手の身に置き換わって内省してあげるという観察手段」と定義していますが、相手の立場になって考え、そのとき自分自身どんな気分、感情になるかを想像するような観察手段によって相手の心の世界も見えてくるというのです。
ビジネスの世界ではとくにいえることですが、相手がなにを望んでいるかを理解しないことにはセールスもうまくいきません。
これでは相手の心理的ニーズを満たすことなどできず、相手の心に響かせるプレゼンテーションも不可能です。
社内での人間関係もしかりで、上司として部下を励まし、慰めたりする場面でも、本当の意味で部下の心理状態を理解していなければ、相手の心に響く言葉はかけられません。
部下のサイドから見ても、自分を理解していない上司との間には深い溝のようなものが感じられ、近寄りがたいものです。
むろんこの状態では、「あの人のためなら憎しみない協力をしよう」などという発想が生まれるはずもありません。
共感能力を身につけ、それを生かしているか否かは、じつはまわりから協力が得られるかどうかを左右する重要なポイントであるわけです。
実際、共感能力を使ってまわりと上手に接している対人関係能力にすぐれた人は、どんな相手、どんな場面でも深い人間関係、信頼関係を築き、円滑にビジネスを進めています。
これは「ビジネス心理戦」を戦う能力をはかるうえでの重要な要素になります。
他人への共感力をもち、相手のニーズを満たして健全な相互依存関係を築くことのできる豊かな心を育むことは、できるビジネスマンへと変身する必須条件のひとつなのです。
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柔軟な推論能力がビジネスの可能性をグンと広げる
心理学の世界では最近、認知心理学に注目が集まっています。
これは人間の知的活動をコンピュータになぞらえて、いわば情報処理過程としてとらえるのが特徴です。
そして、この認知心理学には、二一世紀を不安なく生きることを保証する能力 − 「ビジネス心理戦」に勝ち抜くすぐれたビジネス思考力を身につけるうえでの重要なヒントが数多く隠されていると私は考えています。
認知心理学の世界では、人間の思考を「知識を用いて推論を行うこと」と定義しています。
ここでいう「知識」は、学校で勉強する英単語や数学の定理のような断片的なものに限定されません。
経験を積み重ねることで身につける、いわゆる経験知のようなものも含んでいます。
人間は新たな問題にぶつかったとき、それを解決しようとさまざまな推論を行うものです。
それは無から有を生むような作業ではありません。
過去の経験や知識を動員して脳のなかであれこれシミュレートしながら、問題解決のための答えを導き出号っとします。
このプロセスは、ときに本人の自覚のないまま、無意識のうちに行われることもあります。
それが自分の得意分野であったり、シミュレート作業に慣れている場合は、その傾向はいっそう顕著になるでしょう。
すぐれたビジネス思考力を備えている人は、じつはこの推論を行う能力に長けているのです。
新商品の開発を例にとって、人間がどのように推論を行っているかをもう少し詳しく見てみましょう。
自分やまわりの人たちが開発のプランを立てていく姿を思い出してみると、過去の経験、データなどをもとに推論を繰り返し行っていることに気づくはずです。
その際最もベースになるのは、どのようなものが売れたか、その商品のどの点が評価されたか、逆にどういう点に不満が集中したかなどの経験的情報です。
そして、他社製品の評価、まったく異なる分野での流行、売れ筋、トレンドなどの知識をすべて活用しながら、どのような商品をどの程度の価格で売ればいいかを推論し、検討しているはずです。
こうした思考作業は、ビジネスにかぎらず、人がものを考えるときに常に行っているものです。
学校で教わる数学などもまったく同じで、問題を解く際に、自分がこれまで身につけてきた解法という知識のどれが使えるかを試しながら、あれこれ推論を行って答えを導き出しています。
まさしくこれが、思考プロセスの原則なのです。
その意味では、ビジネス思考力を磨くには、経験知を含む広い意味での「豊富な知識」を備えることが重要なポイントになります。
知識が多ければ多いほど、さまざまな形で推論が可能になるからです。
しかし知識を使って推論を行うには、知識を単にもっているだけでなく、使いこなす能力もまた必要です。
こうした知識や経験から上手に推論を行う能力を、生まれながらに備えている人もたしかにいます。
しかし、トレーニングによって、どんな人でも磨きをかけることが可能なのです。
その方法にはさまざまなものがあり、たとえば、定石を覚え状況に応じて使い分ける将棋や囲碁、あるいは解法パターンを覚えて問題を解いていく数学や物理の勉強などは、認知心理学の立場からいえばすぐれた思考トレーニングといえます。
より身近なところでは、毎日必ずロにする料理なども、場合によっては思考トレーニングに応用することができます。
たとえば、イタリアンの知識を使って和食に応用するといった工夫は、まさしく思考トレーニングのl種です。
実際、優秀な料理人と呼ばれる人たちは、推論を行ううえでベースとなる豊富な知識をもち、これを使いこなす思考力にすぐれているものです。
いずれにせよ、すぐれたビジネス思考力は、経験的なものを含めた知識の豊富さと、これを自在に使いこなして豊かな推論を行う思考力の両輪によって成り立っているといえます。
ちなみに、推論を豊かにするトレーニングそのものは、毎日の生活のなかでも簡単にできるので、ビジネス思考力の向上をめざして日々努力に励んでいただきたいと思います。
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海外取引も怖くない!ビジネス英語力獲得トレーニング
国際化・情報化社会の到来で、これまで以上に語学力が問われるようになっています。
「英語を第二公用語にすべき」という主張まであるくらいですから、英語力の向上によってビジネスチャンスを広げたい、自分の評価を高めたいという思いは、ビジネスマンならだれでも一度は抱いたことがあるはずです。
そんな夢を現実にしようと、英会話学校などに通いながら英語勉強に励んでいる人も多いようです。
しかし、社会のニーズは本当に「英会話」にあるのでしょうか?
むしろ、これからしばらくは書く英語力、読む英語力の要求が高まると私は考えていますので、この機会にあえてアドバイスをしておきたいと思います。
その根拠は、昨今著しい情報技術の進歩にあります。
情報伝達、情報検索の手段はいまではインターネットに依存する割合が高くなっています。
その結果、ビジネスの世界でも、じかに会ってコミュニケーションを行う機会は、かつてと比べると本当に少なくなりました。
とくに英語を使う国際間のやり取りになると、その傾向はいっそう顕著です。
電子メールを使えば、時差の、心配もなく、コストも国際電話よりはるかに安くつきます。
そのため、国際間のやりとりでは、いまでは電子メールが主流になりつつあります。
情報検索にしても、英語さえ読めれば、インターネットを通じて世界で最もアップトゥデイトな情報にリアルタイムで触れられるというメリットがあります。
英語の読み書きができることで受けられる恩恵は、社会のIT化が進むことで以前にも増して高まっているわけです。
日本の学校教育で行われている読み書き中心の英語は、「何年勉強しても会話ひとつできない」となにかと批判の対象にされてきたものです。
そういう意味で、「自分も英語コンプレックスから抜け出すことができなかったひとり」と自覚されている方は、みなさんのなかにも多いことでしょう。
しかし、IT化の進展は、そんな人たちが、受験英語を駆使して国際人に変身する千載一遇のチャンスなのです。
もっとも現実はそう甘くはなく、日本人の英語読解能力が想像しているほど高くないことは自覚しなければなりません。
それは、実際に英文を読ませてみれば一目瞭然です。
書く英語もしかりで、その場その場で適当な英文を引き出す能力を磨かないかぎりは、国際人への道のりは遠いといえましょう。
そうはいっても、受験英語をたっぷり勉強してきた日本人の読み書きの潜在能力は高いはずです。
努力次第で活路を開くこともできるでしょう。
それに、実用英語の読み書きに必要な文法は、おおむね中学卒業レベルか高一程度です。
「英語の成績が若かった」「英語はやっぱり苦手だ」と大げさに嘆くことはないのです。
それでは、実際にビジネスで使える英語力を上達させるためには、どのような勉強に励むべきでしょうか。
まず、インターネット時代の英語トレーニングとして私が提唱したいのは、徹底的に読みまくる勉強法です。
時間の制約もあるでしょうから、自分の興味がある対象や、現在の職業・専門領域に関するもの、あるいは読みやすい時事ネタなどから適当に材料を選んで、少しずつでも毎日継続して行うのが効果的です。
ここにあげた三つの分野には、ある共通点があります。
それは、書かれている内容がある程度想像できる、つまり背景知識がすでにあるという点です。
単語がわからなくても、ある程度まで勘に頼って読み進めることができれば、苦手な英語でも読み続けることは比較的楽です。
そのうえで、勘で読んだ部分をメモして覚えたり、ときには辞書で確認しながら知識を広げていけば、次第に英文の読解力も向上するというわけです。
この方法は、どんな場面でどんな単語が使われるかを知ることになるので、書く英語力の向上にもそのまま直結します。
同じ要領でメモをとりながら、フレーズ単位、文章単位で「これは使える」と感じた表現を覚える習慣を身につけると、書く英語の表現力もいっそう増すはずです。
以上の作業を通じて自分のなかに英語表現のストックがある程度たまったところで、今度は書くトレーニングのプロセスに入ります。
能力を飛躍的に向上させるためには、ここでもちょっとした秘訣があります。
私の場合、英語を書く能力が向上したのは、アメリカ人の精神分析スーパーバイザーとのディスカッションの資料用に治療記録を英文に直し続けたことと、英語の論文をいくつか書いたのがきっかけでした。
その際、エディターと呼ばれる人を紹介され、徹底的に添削をしてもらうことで「正しい書き方」を学んだわけです。
この経験を通じて知ったのは、下手でもいいからたくさんの英文を書き、ネイティブの人にそれを添削してもらうトレーニング法の驚くべき効果です。
指導してくれたネイティブの質の高さもさることながら、実際に自分で苦労しながら英文を書いたこともあって、このシチュエーションではこの表現を使うのが適当という「正しい書き方」の指摘が抵抗なく頭に入ってきました。
ちなみに、仕事で英文を書く機会がなかなかない人の練習法としては、インターネットのチャットの場を活用する方法があります。
これで、言いたいことを英文にする習慣をつくるのです。
これまで蓄えたフレーズや表現法(知識)を用いて言いたいことを文章にする(推論する)という作業過程は、認知心理学の思考トレーーングそのものです。
さらには、定型的な型にはまった英文を書き続けることで、表現方法を自分のものにすることもできます。
こうして書いたものを可能なかぎりネイティブに添削してもらうことで、学んだものが記憶に残りやすくなりますし、外国人にも受け入れられやすい表現を身につけることができるはずです。
なお、サポートしてもらうネイティブは、インターネットのチャットなどを通じて探すこともできます。
ただし、相手のレベルが低いとお粗末な英語力しか身につかないので、その点は注意を要します。
意外なことに、アメリカ人なのに、英語を書く能力がお粗末という人は少なくありません。
実際、私が紹介された先のエディターにしても、下手な英文を書くネイティブを添削指導したり、ネイティブが論文を発表する際に上手な英語に直してあげたりすることを本職としていました。
すなわち、ネイティブの助けを借りるこの種の勉強法では、添削をしてくれる相手次第で、得られる効果に大きな差が出てくるわけです。
留学生会館へ貼り紙をしてみたり、多少の出費を覚悟してでも「よいネイティブ」を探すことを心がけたいものです。
とにもかくにも、国際化社会のビジネスマンの強力な武器になる英語上達法は、受験英語で手慣れた「読める、書ける」能力を確固たるものにすることから手軽に始めることです。
それをクリアしていけば、「聞きとれない、しゃべれない」のコンプレックスから抜け出せる日も近いのではないでしょうか。
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がんばりがきかないときのうつ病治療応用法
長い期間勉強や仕事を続けていけば、いいときと悪いときの波はどうしてもあります。
ひどいときには、勉強や仕事がまったく手につかない状態に陥ることもあるでしょうが、こうしたスランプから脱するのは、ちょっとしたコツをつかんでいればそう難しいことではありません。
勉強していても気分が乗らないなど、不安に悩まされている状態を改善する方法として、うつ病の治療法が参考になります。
「目の前の作業」をこなすことは、罪悪感や過度の悲観をともなう不安と緊張をほぐしてくれる。
スランプ状態は病とはちがいますが、物の見方が悲観的になったり、罪悪感を強く感じる症状を見ていると、うつ病との共通性を感じるのです。
うつ病の治療に効果を上げている方法として、認知行動療法があります。
悲観的な認知の原因になっている「認知の歪み」を、行動によって修正させるやり方です。
うつ病患者の場合、励ましは意味がないどころかマイナス効果しか与えません。
「がんばれ」といわれてもがんばれないので、「やっぱり自分はだめな人間なんだ」と逆に罪悪感を強めてしまうからです。
こんなとき、実際に体を動かすことでわからせるのが認知行動療法です。
できないと思い込んでいることもじつはできるのだということを、本人の現実の体験として理解させるわけです。
そうすることで、「認知の歪み」も少しずつとれていき、症状が好転するのです。
スランプのときも同じこと。
いくら自分で自分を励ましても効果があるとは限りません。
それよりも、体験することで納得するほうが確実で手っ取り早い方法となるのです。
認知に歪みが生じて悲観的になっているから「一日三時間の勉強などできない」と悩み、結局勉強をやらないことになります。
そうではなくて、20分はできた、40分もできたという「できる体験」を通じて「このくらいならできる」となれば、もうしめたものです。
その瞬間に不安や緊張がほぐれ、自分を取り戻すことができるでしょう。
もうひとつ、うつ病や不安神経症の治療に効果を上げている森田療法の活用法にも触れておきましょう。
森田療法の考え方は、基本的に「目の前にあることをやらせる」ことで、不安を自覚させないというものです。
未来不安や過去の後悔から不安が生じているのなら、そこに意識をもっていくのはマイナスです。
そうならないために、いまやるべき課題を自分に与え続け、悲観的な認知しかできない未来や過去を見すぎないようにさせるのが、この方法のねらいです。
たとえば、机の前に座ったとき、頭のなかを不安が駆けめぐって勉強が手につかないようなら、過去に行った勉強の復習をしてみるのもいいでしょう。
あるいは、資料を整理したり、鉛筆を削るだけでもいいのです。
こうして「いまやるべき作業」をやることによってよけいな不安が多少でも取り除かれたら、すぐに目的の勉強を開始します。
これが森田療法的なスランプ脱出へのアプローチです。
なお、スランプ対策としては、思い切って勉強を中断し、リフレッシュをはかるという解決策もあります。
スランプは何も精神的問題ばかりが原因となっているわけではありません。
体が疲れているため思うように動かないということも往々にしてあるわけです。
そんなときは、体がサインを出していると考え、ゆっくりと休むのもひとつの手です。
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「書きなぐりメモ術」の意外な時間節約効果
仕事や勉強に役立つメモ術についても、触れておきましょう。
受験生などに私が伝授しているテクニックの応用です。
セミナーなどを受講するとき、原則的に私はメモ帳を一切使いません。
その代わりに、最低でもB5サイズのレポート用紙やノートを用意し、講師の話す内容を一心不乱に書きしるすことを実行しています。
一見すると、講師の話の要点だけをまとめてメモにとったほうが効率的で、私のやり方は無駄に思えるかもしれません。
しかし、よほど自分の理解が進んでいるジャンルでもなければ、言うほど簡単にはその場で要点をまとめることなどできないものです。
「整理してメモをとったほうが効率的」などとは一概にいえないわけです。
それに、いざメモを読み返す際にも、もともと理解がないのに要点から中身を思い返すのは困難を極めます。
そんなとき、話の本筋から雑談、枝葉の情報に至るまでをメモに残していたほうが、後で見返す際にはるかに理解しやすいし、印象にも残っているものです。
同じように、厚くても理解が進む参考書を使ったほうが要点集を使うよりも勉強が進むというのは、受験生が実際に体験していることでもあります。
受験参考書の世界では、この種の予備校講師の講義録風のものが売れ筋になっているくらいですから、その意味でも「書き殴りメモ術」の効能はすでに証明済みといえます。
それならば、話をテープにとればいいじゃないかと考える人もいるかもしれません。
が、テープは聞き直すのに聞いたときと同じ時間をとられてしまいますから、効率的な方法とはいえません。
集中して書き留めながら少しでも内容を理解しようと努力したほうが、時間の有効利用につながるのです。
ちなみに、目の前で一心不乱にメモをとる姿は、相手の自己愛を刺激することにも通じます。
人によっては、そんな姿を見て気分をよくしていろいろなことを話してくれることもあるので、対話に支障を来さない範囲ならば、ビジネスの場面でも試してみてはいかがでしょうか。
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「できる人」はこうして時間をつくり出す
社会に出たビジネスマンが、新しいことを始めよう、こんなことを勉強しようと考えたとき、まず問題になるのは時間です。
推論を豊かにしたり、メタ認知を身につけるトレーニングは、毎日の生活の場を利用してもできます。
ところが、新たな知識の獲得、英語力のアップや資格取得の準備など、そのための時間を設けないとできない勉強も多々あるので、これはなかなかたいへんな問題です。
時間の捻出は「引き算方式」で。
優先順位をつけて合理的・効率的に。
いうまでもなく、だれにとっても1日は11四時間。
これを物理的に増やすことはできません。
まずは無駄な時間をなくすことを考えましょう。
そうはいっても、何をもって無駄な時間と定義するかは、難しい問題です。
睡眠を削れば精神的な不安定を誘発することにもなりかねないし、娯楽時間を削ることで逆に集中力が欠如することもあるからです。
したがって、「無駄な時間」の定義を行うなら、「勉強や仕事などに役立たない時間」とすることができます。
毎日の生活のなかで無駄な時間をなくすには、時間を使い方別にいくつかのグループに分類し、優先順位をはっきりさせることです。
そのなかで第一に優先すべきなのは、生きるために必要な時間です。
寸暇を憎しんで勉強したいという意欲がいくらあっても、睡眠時間や食事時間まで削ることには生活上無理があります。
生活の糧を得るための仕事時間も当然必要です。
これらは生きるために必要な時間なのだということを素直に認めて、省くべき無駄な時間とは明確に分けて考えるべきです。
すべてに優先されるこれらの時間も、たとえば睡眠時間を30分減らすといった形で時間を捻出する対策とすることができないわけではありません。
なかには、勉強時間を確保するために夜の睡眠時間を二時間減らし、その代わりに帰宅後に30分の仮眠をとるといった工夫をしながら能率を上げている人もいます。
しかし、こういう手法は、だれもが真似できるものではないでしょう。
睡眠時間というものは、意外に個人差が大きいものです。
実際に試してみなければ自分の集中力にどのような影響を及ぼすかもわからないので、一概にこうだということはいえません。
それでもあえてアドバイスを行うなら、自分に合ったベストの睡眠時間を知ること、それが無駄な時間を省く際のひとつのテクニックということはできます。
食事や仕事の時間もまたしかりです。
ファーストフードに頼って食事時間を短縮しても、栄養のバランスを崩してしまっては本末転倒です。
また、勉強の能率に合わせてフレックスタイムにしてもらう方法もありますが、それによって本業に悪影響が出ては意味がありません。
いずれにせよ、生きるために必要な時間を削る場合には、無理なくできるかどうかを基準に自分なりのやり方を見つけるしかありません。
生きるために必要な時間を最低限確保できたら、次に優先すべきグループはもちろん勉強の時間です。
帰宅後にきちんと勉強時間をつくるのは当然のこととして、古典的な工夫ながら、通勤中に本を読むなどというやり方も集中を維持できる人には有効です。
また、個人差はあるにせよ、トイレや風呂、ベッドに入ってから寝つくまでのちょっとした時間なども、やはり勉強時間として使うことができます。
集中が保てないのに無理して行うのは逆効果ですが、ちょっとした時間を使ってできる独自の効果的勉強法が見つけられれば、それにこしたことはありません。
最後のグループに分類されるのは、本当の意味での無駄な時間です。
意味もなくのんべんだらりとテレビを見たり、ゴロゴロしているだけの時間はやはり無駄以外のなにものでもなく、減らすように心がけるべきです。
誤解のないように断っておきますが、一見すると無駄に見えても、それが勉強や仕事の能率を上げるための休息になっている時間もあります。
こちらはあえて削る必要はありません。
現実問題として、心に余裕のない状態で勉強を続けていては、ストレスが高じたり、気が滅入ってかえって勉強に集中できない状況に陥ることがあります。
そんなときは能率維持の時間として、映画やゲームなど、好きな娯楽の時間を勉強のご褒美として用意したほうが意欲も持続するし、長い目で見れば効率的なのです。
私のいう無駄な時間とは、気分転換にもならない、本当の意味での無駄な時間であることをもう一度確認しておきたいと思います。
そもそも社会に出てからの大人の勉強は、忙しい生活のなかで時間をやりくりして行わなければならないたいへんなものです。
試験日が設定され、期日が限られている資格試験の受験勉強などを除いては、余裕をもって行うほうが成果も上がるはずです。
前にも触れましたが、結局、日々の成果を上げられるか否かを左右するのは、関心や興味を持続させられるかどうかです。
息がつまるようなやり方で無理矢理時間をつくり出しても結局は、肝心の勉強には集中できず、長続きもしなかった、ということになりかねないのです。
その意味では、自分なりのライフスタイルを優先するのも、ひとつの手です。
そのうえで、さきほどの時間づくりのアイデアをヒントにして、自分なりの勉強スタイルを築いていくのが理想ではないでしょうか。
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覚えたことを忘れない「起きがけ復習法」
せっかく記憶した知識を時間の経過とともに次々に忘れてしまっては、これまでの努力も水の泡です。
そうならないために、記憶を保持しておく対策を講じる必要があります。
記憶の保持については、古くから心理学者がさまざまな実験を繰り返してきました。
しかし、ひとつをのぞいて、抜群の効果が確認された事例はいまだにありません。
心理学者のだれもが認めるように、やはり反復こそが最良の手段なのです。
「寝ているときはよけいな情報も入らないので寝る前に覚えたことは忘れないですむ」というふうに解釈されています。
しかし、心理学の世界ではこの説を真っ向から否定する意見もあり、睡眠時にはいろいろなことを忘れていっているという正反対の主張をしている精神医学者もいます。
私はこれらの説を併せ考え、「起きがけの復習が効果的」と考えています。
眠ることで忘れずにすんだものを記憶として保持するにせよ、眠ることで曖昧になりかけた理解を回復させるにせよ、翌朝に起きてから何をするかが重要だと思うからです。
翌朝復習のテクニックは、私自身、記憶力アップの極意として受験生にも伝授しています。
これまでにかなりの効果を上げていますが、併せて週末の復習勉強を行うことで、記憶の定着率はさらに高まるようです。
社会人が勉強する場合、仕事に忙殺されて復習がないがしろにされるケースが多いようです。
しかし、若い頃に比べて、記憶力そのものは低下しているのですから、社会人こそ、復習プロセスを大事にしたいものです。
では、いったいどれくらいの時間を復習にあてればいいのでしょうか。
この点について、クリューガーという心理学者が興味深い実験を行っています。
一定の数の単語を覚える際の復習時間を比較する実験です。
それによると、単語を覚えるのにかけた時間の半分の時間を復習にあてた場合と、覚えるときと同じ時間をかけて復習した場合とでは、記憶の保持率に大差はなかったというものです。
復習は長ければいいというものではありません。
短時間に、効率よく進めるように心がけたいものです。
私が「起きがけ復習」をすすめるのは、そうした意味もあるのです。
記憶力を高めるポイントとしてもうひとつ、「よけいなことは覚えない」ということを指摘しておきましょう。
よけいなことを覚えることが、記憶保持の妨げとなるからです。
心理学の世界に、「逆行抑制」という言葉があります。
新しいことを覚えると前に覚えていたことを忘れるということを意味しており、個人差はあるにせよ、だれもが日常的に経験していることと思います。
前述のジェンキンスとダレンバックの実験は、就寝中は逆行抑制が起きにくいと考えることで説明がつくとされています。
繰り返しインプットすることで記憶を保持する復習は、まさにこの逆行抑制への対処法といえます。
それに加えて、よけいなこと、無駄なことを覚えないという心構えで臨めば、必要な情報、知識の記憶はより効果的にできるはずです。
資格試験などの勉強でも、「覚えることは最小限にするのが成功の鉄則である」という意見があります。
出題傾向を分析し、試験に必要な情報と不必要な情報とに取捨選択をして記憶として取り込むことで効率的な勉強ができるという発想です。
そもそも知識というのは、「使える」状態で頭に残してこそ意味のあるものです。
豊富な知識を備えていることと、やみくもに情報を入力するのとでは根本的にちがいます。
「入力情報は少なく、それでいて頭に残る知識は多く」というのが理想的記憶テクニックなのです。
よほど記憶力に自信がないかぎりは、入力段階で情報を取捨選択することはとても大切なことなのです。
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「メタ認知」プラス「共感能力」で味方をふやせ
推論やメタ認知をさらに豊かなものにするテクニックとして、以前に少し取り上げた共感能力に磨きをかけることも大きなポイントのひとつとしてあげられます。
「共感」は、前にも述べたように、いまアメリカで最も人気の精神分析学である自己心理学やEQ理論などでも重視されている概念です。
他者への共感能力を高めることは、対人関係を円滑かつ豊かにするものですが、そこから得られるものはそれだけにとどまりません。
まわりの人の立場や主観でものを感じ、考えられることは、自分自身の思考のバリエーションの拡大にも結びつくのです。
共感の定義にはさまざまな説がありますが、一般的には同情とは明確に区別しようとする傾向にあります。
同情も共感も、相手の感情状態を自分も同じように体験しようとする点では同じです。
しかし、同情の場合は、相手のもつ感情が悲しみ、苦しみなど否定的なものに限定され、また、相手の気持ちそのものより、それに対してこちらがどう思うかという一方的概念として位置づけられるわけです。
さて、自己心理学の祖、コフートが共感に目をつけたのは、その観察手段としての有効性ゆえでした。
意外に思われるかもしれませんが、相手の心理状態や主観的世界は、共感を通じてしか観察できません。
ここでいう「観察」とは、相手の立場に身を置くとどのような心の体験をするかを想像することです。
なお、共感も毎日のトレーニングで身につけやすい能力だといえます。
とくに対人関係がからむ場面で、本当の意味で相手の立場に身を置き、感情を想像して考えることを習慣化していけば、容易に高めていくことができます。
このトレーニングは積み重ねが大切です。
正しい努力を続ければ、やがて人の気持ちがよくわかるようになるでしょう。
また、自分とはちがう新鮮な思考パターンに触れることで自分のなかに思考のバリエーションを増やすことができるという、一挙両得のメリットもあるわけです。
ビジネスの世界では、共感力向上の成果は商談の際に発揮されるでしょう。
相手の心の状態や考え方がわかれば、相手のニーズのみならず、弱点や落としどころもよくわかるからです。
共感力に磨きをかけることは、交渉能力、説得能力などを高めることにもそのまま結びつくものなのです。
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「つまみ食い読書術」で時間節約、能率アップ
効率的勉強というからには、読書法にも工夫を懲らしたいものです。
少なくとも読んでいる本のはじめから最後までを時記しようとするようなやり方は、時間もかかりすぎるしポイントがおさえられないので意味がありません。
私の場合は、自分が知識にしたいと感じた部分に大きめの付箋を貼るようにしています。
その付箋に「なぜそれを貼ったか」の理由を記しておけば、資料として引用したいときにすぐに検索もできます。
さらに、本のなかで強く賛成できるところ、検討に不満が残るところ、理解が困難なところなどにも、はっきりとその旨を書いた付箋を貼るようにしています。
こうすることで、その本は単なる情報源ではなくなり、自分の考えを整理した「使える」資料に生まれ変わります。
また、アメリカ留学時代にマスターした効率的な方法として、「つまみぐい読書術」というものがあります。
それは留学先の精神医学校の勉強で、講義に必要な莫大な量の英語の本の読書を課されたのがそもそものきっかけでした。
まるごと一冊読んでいたのでは次の講義までにとても間に合いません。
それまでの私は、本というのはたとえ飛ばし読みでも最初から最後まで通して読まなければ意味がないと信じて疑いませんでした。
しかしこのとき、時間不足から私は自分の考えを変えました。
講師がとくに指定した部分にしぼって読むことにしたのです。
これを機に、本とは部分的に読んでも著者のいいたいことはわかるし、十分な知識も得られるものであるということに気づいたのは、本当に大きな収穫でした。
以来、日本語の本でも、時間節約のために、まず目次を見ては興味深い部分、役に立ちそうに思える部分を選び、そこだけを集中的に読むようにしています。
その結果、情報の収集量、使える参考文献の数とも飛躍的に増えましたから、つまみぐい読書術さまさまといったところです。
ただし、まだ理解が十分でない分野の本を読む場合は、ときに内容を曲解する危険もあるのでこの方法はおすすめできません。
しかし、すでにある程度理解を深めている分野でつまみ食い的に本を読むならば、知識の幅を広げるスピードが速まり、短時間で多くの推論パターンに接するメリットを得られます。
なお、人によっては、速読法を身につけて一冊の本全体に目を通すことをすすめるかもしれませんが、この方法ではどれだけ内容を理解できるかは疑問なので、賛成しかねます。
それよりも、たとえ一部分でも大事なところを熟読するほうが、知識として頭に残るものは多いのです。
カテゴリー:ビジネス思考力を鍛える勉強法
楽観的になりすぎるのも考えもの
不安やプレッシャーが大きくなると、ふだんなら当たり前の現実感覚が狂ってしまうことがあります。
資格試験を受ける前など、「試験場に入ったとたん、いままで勉強したことを全部忘れたらどうしよう」と、ありもしないことを考えて悩んだりするのがその典型です。
こんなときは、不安を静め、ふだんの自分を取り戻さなければなりません。
そのために、お守りを身につけるという発想も、不安解消に効果があるならそれはそれで悪いことではありません。
そうはいっても、人やもの、あるいは神様のような存在に頼る気持ちがあまりに強いのも困りものです。
依存心ばかりが強くなって、主体的に自分で動かなくなることもあるからです。
自分以外のものを頼りにする他力本願の発想は、だれもが多少なりとも心のなかにもち合わせているのもたしかです。
「勝つも負けるもときの運」「果報は寝て待て」などのことわざもあるくらいなので、人の力が及ばない運・不運は実際にあるのかもしれませんが、それに頼ってばかりではなにもできません。
これらのことわざにしても、「やるべきことはすべてやった」ことを前提としているはずです。
私自身は、「できるビジネスマン」を志す者にとって、過度な他力本願的発想は危険きわまりないものだと考えています。
「対策塾にも通っているから試験もなんとかなる」「講師のいうとおりにやっているからなんとかなる」「いよいよヤバくなっても、自分は運が強いから本番で逆転できる」などといった思考パターンは大きな誤りです。
楽観的な感覚は、不必要な不安にとらわれずに勉強に集中するときには役に立ちますが、その感覚ゆえに、勉強に手がつかない、努力しない状態が続くようでは困ります。
そういう人は、自分というものをしっかりもって、現状を正しく理解する必要があります。
まわりに影響されやすい人を指して、「自分がない」といったりします。
これは動いているのがほかでもない自分であるという感覚が、たいへん希薄な状態を表しています。
たとえば、営業成績が悪いとき、「情けない」と感じることができるのは、その結果の原因をつくっているのはほかでもない自分、責任をとるのも自分だという意識があるからです。
ところが、「自分がない人」は、この意識そのものが希薄なので、成績がよくてもそれが自信につながらないし、悪い成績をとれば自信をなくすという思考の悪循環に陥りがちです。
自分がない他力本願の状態は、乳児の心の世界に近いものがあります。
「ただ存在しているだけ」とされている時期は、現象の因果関係も自覚できず、安心も得られずにまわりの世界も怖く見えるだけです。
やがて成長するなかで、因果関係を理解し、自分というものを自覚しながら自発的行動が始まるわけですが、いつまでも因果関係を理解せずに自分がもてないようでは、心理的な乳児の状態と同じだといわれても仕方ありません。
実際の大人の場合、赤ちゃんとはちがって因果関係を理解するのは簡単なことです。
知識がなかなか身につかないのは勉強をさぼっているのが原因だ、復習不足に問題がある、関連図書の読み込みが足りないなど、目の前の結果を自分と結びつけて考えることは意識すればだれでもできます。
そして、その習慣が「自分がない」状態から「自分がある」状態への架け橋にもなります。
因果関係のなかに自分を組み込む発想をもつことができれば、できるビジネスマンに変身するための道も自ずと理解できるはずです。
こうした想像力を培うことも、積極的に動く自分をつくっていくうえでは必要なことなのです。
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推論プロセスを数学に学ぶ
知識を習得することは「できるビジネスマンになるための基礎中の基礎です。
しかし、それだけでは単なる「物知り」に終わってしまい、「ビジネス心理戦」を勝ち抜いていくことはできません。
そこで必要となってくるのが「推論能力」です。
外から材料をインプットする記憶の作業とはちがって、推論数学の推論パターンはあらゆる問題解決に応用することができる。
は、純粋に脳のなかだけで行うものです。
個人差が大きいばかりでなく、まわりからはなかなか見えにくいという特徴をもっており、量より質が問われます。
そのわりには「この推論がよい」という「正解」もないので、推論能力を磨くための理想テクニックはイメージしにくいかもしれません。
しかしじつは、実用的トレーニング法はあるのです。
ここではそのような推論トレーニングの方法を紹介することにしましょう。
思考の大原則は、知識を用いて推論を行うことです。
知識を加工することなくふだんの会話のネタや資格試験の解答に利用しているだけでは、すぐれたビジネス思考力を培うことはできません。
知識を用いて推論を行う有効なトレーニングは、学校でだれもが行ってきた数学のプロセスに学ぶことができます。
公式や解法を覚え、実際に問題を解くなかで解法に関する知識を深めていくのが数学の問題解決方法です。
知っているかぎりの解法を使いながら問題に取り組む繰り返し作業のなかで、その間題に使える解法。
パターンを適切に取捨選択すること、すなわち推論の幅を広げることができます。
昔から「数学ができる人は頭がよい」といわれてきましたが、これは数学的ひらめきがすぐれているというより、知識を用いて行う推論能力に長けているという意味だと解釈できます。
そもそも数学で大切なのは、思い浮かぶかぎりの解法パターンをあきらめずに試行することです。
これこそが、推論トレーニングそのものなのです。
なお、数学は、実社会で役に立たない学問の最たる例として扱われることがありますが、それは明らかにまちがいです。
趣味的に高校レベルの数学の問題集を解くだけでも格好の頭の体操になり、知識を用いて推論を行うトレーニングにつながるものなので、決して軽視できません。
知識を用いた推論にはそのほかにも、インターネットなどで集めた世界情勢に関する知識から世界の動きを予測してみたり、仲間を集めてディベートを行うなどのトレーニングが考えられます。
身近なところで、独立や転職を想像しながら、自分がこれまで得てきた知識を異なる職場でどのように応用できるか空想してみるのも、推論を豊かにするおもしろい方法になるでしょう。
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「できる人」は「メタ認知」を活用している
認知心理学でいう「思考力のある人」とは、知識を多く身につけ、それを使って適切な問題解決の方法を導き出す推論能力に長けている人と定義できます。
学歴重視・年功序列といった価値観が崩れ、能力主義・実力主義の時代を迎えたいま、現実にこのようなタイプが「できるビジネスマン」としてもてはやされています。
ここまで繰り返し述べてきたように、目の前の問題、トラブルを解決する方策を導く推論を行う作業は、これに必要な知識や経験がなければできません。
その意味では、一定の知識を備えていることが、「できるビジネスマン」になるための必要最低条件となるわけです。
しかし、知識があっても適切な解決策を導き出せないのでは意味がありません。
豊富な知識が逆に推論の邪魔になることは、意外にあるものです。
たとえば、いろいろな問題に対して、「〜はこう言っている」という形で、推論を行わずに知識だけで答えてしまう人や、過去にどんな商品が売れたという経験則、いわゆるマーケティングの常識に縛られるあまり、ときと場合に応じた柔軟な推論ができない人などもそうです。
一見すると、学歴も高く優秀そうなのに、「できる人」という評価を得られないのは、じつはこのようなケースが大半です。
認知心理学の世界では、思考力にすぐれた人が複雑な問題に直面したとき、それをいきなり解決するようなことはしないと考えます。
実際の推論に入る前に、その間題を解決するために必要な知識を自分がどの程度有しているか、あるいは自分の推論が偏っていないかをモニタリングしてみるものだと考えているわけです。
この作業は、「メタ認知」と呼ばれています。
別の表現を使えば、メタ認知とは、自分が無意識ないし意識的に行っている認知活動を、さらに一段上から客観的に見る認知活動という定義もできます。
認知心理学者のブラウンは、問題解決にかかわるメタ認知を「自分の能力限界の予測」「問題点の整理」「適切な解決法の予測」「点検とモニタリング」「決断」などに分類しています。
人間の思考は、経験や嗜好、あるいはその立場などにどうしても左右されるものです。
たとえば、同じくらいの知的レベルの人を集めて、「たばこを好きな人がどの程度の比率で日本人にいるか?」という質問をしたとしましょう。
すると、質問された人が喫煙者か否かによって、答えの傾向が分かれてきます。
実際に行われた心理学実験でも、たばこを吸う人は高い数字を答え、たばこを吸わない人は低い数字を答えるという結果が出ています。
これは人間の推論パターンが、自分の立場によって簡単に変わってしまうことを意味しているのです。
現実のビジネスの場面でいえば、推論の材料となる知識を集める段階で自分の期待に沿う情報を優先的に集めていたり、期待に沿わない情報を直視しなかったりすることになりがちです。
嫌いな相手の主張と同意見にならないように、無意識のうちにゆがんだ推論を行っていることもあるでしょう。
その逆に、まわりの人間の意見がある方向に集中していたり、その道の権威と呼ばれる人の発言を聞くと自分の推論をついそれに合わせてしまう傾向もあります。
このことも、社会心理学者の実験で確認されています。
ところが、客観的な視点から自分のゆがんだ認知を修正するメタ認知を行える人は、このときの対応が違います。
さまざまな条件によって無意識のうちの影響を受けていても、「いまの立場に自分の認知が左右されていないか」「感情に振り回されていないか」「いままでの知識にとらわれすぎていないか」といった自己分析による修正ができるわけです。
このように、一段上から客観的に自分の認知活動を見つめることで推論の誤りを矯正できる点が、メタ認知にすぐれた人の強みです。
こうした推論の修正作業ができる能力を有していれば、どんなに情報や知識が多くても決して邪魔にはなりません。
自分のもつ知識が使えるものかどうかを常にモニタリングし、頭のなかで優先順位をつけたりしながら豊富な知識を整理することが可能だからです。
また、推論に強く影響を与えるまわりの人やその道の権威の意見にそのまま引きずられて誤った判断をすることも少なくなるでしょう。
メタ認知をいかに身につけていくかは、「ビジネス心理戦」に強い「できるビジネスマン」になれるかどうかを左右する重要なポイントなのです。
メタ認知は、トレー二ングマニュアルに従って鍛えていくというたぐいのものではありませんが、意識して経験を積むことによって、少しずつ身につけていくことができます。
どのような問題についても常にいくつかの解決策を想定する「複眼思考」を、叫がけることによってそれは可能となりますが、具体的なトレーニング内容は別の記事にゆずることとします。
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