「メタ認知」プラス「共感能力」で味方をふやせ
推論やメタ認知をさらに豊かなものにするテクニックとして、以前に少し取り上げた共感能力に磨きをかけることも大きなポイントのひとつとしてあげられます。
「共感」は、前にも述べたように、いまアメリカで最も人気の精神分析学である自己心理学やEQ理論などでも重視されている概念です。
他者への共感能力を高めることは、対人関係を円滑かつ豊かにするものですが、そこから得られるものはそれだけにとどまりません。
まわりの人の立場や主観でものを感じ、考えられることは、自分自身の思考のバリエーションの拡大にも結びつくのです。
共感の定義にはさまざまな説がありますが、一般的には同情とは明確に区別しようとする傾向にあります。
同情も共感も、相手の感情状態を自分も同じように体験しようとする点では同じです。
しかし、同情の場合は、相手のもつ感情が悲しみ、苦しみなど否定的なものに限定され、また、相手の気持ちそのものより、それに対してこちらがどう思うかという一方的概念として位置づけられるわけです。
さて、自己心理学の祖、コフートが共感に目をつけたのは、その観察手段としての有効性ゆえでした。
意外に思われるかもしれませんが、相手の心理状態や主観的世界は、共感を通じてしか観察できません。
ここでいう「観察」とは、相手の立場に身を置くとどのような心の体験をするかを想像することです。
なお、共感も毎日のトレーニングで身につけやすい能力だといえます。
とくに対人関係がからむ場面で、本当の意味で相手の立場に身を置き、感情を想像して考えることを習慣化していけば、容易に高めていくことができます。
このトレーニングは積み重ねが大切です。
正しい努力を続ければ、やがて人の気持ちがよくわかるようになるでしょう。
また、自分とはちがう新鮮な思考パターンに触れることで自分のなかに思考のバリエーションを増やすことができるという、一挙両得のメリットもあるわけです。
ビジネスの世界では、共感力向上の成果は商談の際に発揮されるでしょう。
相手の心の状態や考え方がわかれば、相手のニーズのみならず、弱点や落としどころもよくわかるからです。
共感力に磨きをかけることは、交渉能力、説得能力などを高めることにもそのまま結びつくものなのです。
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