人脈の豊かな人は「共感能力」がちがう
精神科医の立場でいわせてもらえば、人づきあいのいい人のほうが、概して自分の感情コントロールが上手で、他人の感情もよくわかっています。
実際のビジネスの場面でも、不安や抑うつに長期間悩まされるようなプロジェクトに臨まなければならない機会は多いようですが、そんなとき頼りになる他者がいるか否かで、ビジネスの結果も、そこに至るプロセスも大きく変わってきます。
現在最も人気のある精神分析学の領域といっていい自己心理学の祖、ハインツ・コフートは、こんなことをいっています。
人間の発達目標は、親への依存関係から自立していくようなものではなく、親や別の人間との関係を未熟な依存から成熟した依存に変え、まわりの人間をうまく利用できるようにすることだと。
つまりは、対人関係能力を高められるか否かは、まわりと成熟した依存関係がもてるかどうかにかかわっているというわけです。
まわりとの関係は、依存が過度であったり一方的でなく、相手に何かを望んだり期待するかわリ、相手が望むものをわかってあげたり満たしてあげたりする形がベストです。
互いの欠点、弱点を補い、困ったときにはいつでも助け合える関係、それがコフートのいう「成熟した依存関係」です。
こうした良好な関係をまわりと築くためのキーワードが、「共感」です。
この共感についてコフートは、代理内省、つまり「相手の身に置き換わって内省してあげるという観察手段」と定義していますが、相手の立場になって考え、そのとき自分自身どんな気分、感情になるかを想像するような観察手段によって相手の心の世界も見えてくるというのです。
ビジネスの世界ではとくにいえることですが、相手がなにを望んでいるかを理解しないことにはセールスもうまくいきません。
これでは相手の心理的ニーズを満たすことなどできず、相手の心に響かせるプレゼンテーションも不可能です。
社内での人間関係もしかりで、上司として部下を励まし、慰めたりする場面でも、本当の意味で部下の心理状態を理解していなければ、相手の心に響く言葉はかけられません。
部下のサイドから見ても、自分を理解していない上司との間には深い溝のようなものが感じられ、近寄りがたいものです。
むろんこの状態では、「あの人のためなら憎しみない協力をしよう」などという発想が生まれるはずもありません。
共感能力を身につけ、それを生かしているか否かは、じつはまわりから協力が得られるかどうかを左右する重要なポイントであるわけです。
実際、共感能力を使ってまわりと上手に接している対人関係能力にすぐれた人は、どんな相手、どんな場面でも深い人間関係、信頼関係を築き、円滑にビジネスを進めています。
これは「ビジネス心理戦」を戦う能力をはかるうえでの重要な要素になります。
他人への共感力をもち、相手のニーズを満たして健全な相互依存関係を築くことのできる豊かな心を育むことは、できるビジネスマンへと変身する必須条件のひとつなのです。
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