未来不安はそのまま「やる気」に転換できる
概していえるのは、自分の能力を向上させる勉強の必要性を最も強く感じているのは、日々の生活のなかで自らの能力不足を痛感しているタイプの人たちだということでしょう。
リストラなど現実の問題に直面しているケースもあるでしょうし、将来が不安で勉強どころではない人もいるかもしれません。
不安は人間にとってあまりいいものでないように受け止められがちです。
しかしその反面、不安を感じているときのほうが間連解決の手段を講じる動機づけが行いやすく、「勉強をやらねば」という強い意欲にもつながるプラスのメリットがあることも見逃すことはできません。
一般的に、人間の不安の表れ方は、(1)予期型不安、(2)自我理想型不安、(3)超自我型不安のおよそ三つに大別されます。
それぞれを簡単に定義しておくと、以下のとおりです。
(1)予期型不安……人事面での冷遇や営業成績の伸び悩みなど、自分自身の 評価が低い現状から暗い将来までを予期し、思い悩むような不安状態
(2)自我理想型不安……理想としている自分の姿を強く思い描いているが、この理想と現実とのギャップを痛感して思い悩んでいる状態
(3)超自我型不安……営業成績が自分の期待しているより悪いなどの前提があって、上司やまわりが自分を見下す姿を想像したり、自分で自分を責めてしまって、なにか悪いことをしたような罪悪感を感じながら思い悩んでいる状態
こうした不安を抱えて思い悩んだ経験は、だれでも一度はあるはずです。
不安を抱いて思い悩むことそれ自体は恥ずかしいことではありません。
むしろその後どのような意識でどのようなアクションを起こすかのほうが大切なのです。
それでは、抱いた不安をどのように大人の勉強のモチベーション維持に利用できるのでしょうか。
予期型不安の場合は、現実的な解決方法に目を向けるチャンスに転換できます。
人事上の評価が低い、営業成績が悪いなどの現状を自覚すると、給料が下がらないか、リストラされないかと未来を想像して不安が生じるのは当然です。
1番まずいのは、予期不安を抱えているうちにどんどん悲観的になり、それがさらにひどい予期不安を生むことです。
これを予想される姿を現実のものにしないためになにをすべきかを検討する機会にするわけです。
それには、悲観的にも楽観的にもならず、いま解決すべき問題はなにかを盲華に受け止めることが大切です。
理想と現実のギャップに悩まされる自我理想型不安なら、「こんな自分は自分ではない」と一念発起する原動力に転換できます。
「自分はこうあるべき」とする自我理想は、もともと自分の行動や考え方を方向づける「姿なき教師」のようなものです。
これをプラスに転じさせて利用することは、そう難しいことではありません。
反面、自我理想には、「自分はかくあるべき」という理想が強すぎるとそれに振り回されて現実を見失い、まわりからの的確なアドバイスまで受け入れられなくなったり、ちょっとした成長を成長と考えられなくなる危ない一面もあります。
しかしながら、こうした落とし穴を理解し、勉強の必要性を痛感しながら勉強を始める原動力にするなら、なんら問題はないでしょう。
三番目の超自我型不安は、自我理想型不安と同じ系統のものです。
根本にある善悪を含めた価値観が、親の影響など自分が育ってきた環境に左右される点は同じです。
しかし、不安を感じる状態が、「こうあるべき」と理想で考えるのが自我理想型不安、「こうしてはだめ」と罪悪感で考えるのが超自我型不安です。
両者の不安の根っことなる部分は同じでも表れる形はちがうので、ここでは便宜上、分類して考えています。
この超自我型不安は、根本にある個人の価値観がどんなものであれ、悪いとされることをさせない、道を踏み外させないという意識で自分を監視しているからこそ生じるものです。
最近は簡単に犯罪に手を染める人が目立ちますが、こうした例外的ケースを別にすれば、いまに至るまで警察にお世話にならずにまともな人生を歩むことができたのは、まさに超自我型不安があるからだと考えられなくもありません。
なお、この超自我型不安の場合も、予期型不安や自我理想型不安と同じく、マイナス思考に陥ると不安が新たな不安を呼ぶ悪循環に陥りかねないという怖い一面があります。
生じた現象を必要以上に悪く考えたり、あまりにひどい状態なら認知療法などを行って修正する必要もありますが、そこまでひどくなければ、こんな自分になったら恥ずかしい、こんな自分になったら情けないと思って、不安を勉強の動機づけに利用することは可能なはずです。
人間の不安状態は、マイナスをマイナスばかりに感じなくするなど、認知パターンを意識的に変えることでも解消させることはできます。
しかし、度が過ぎると現実がまったく見えなくなるため、人間が建設的に動けなくなってしまうのです。
少なくとも、今後もビジネスの世界で生きていくつもりなら、生じてくる不安はスキルアップのための努力の原動力にすべきです。
そして、努力を通じて結果を出しながら、一つひとつ生じた問題を解決していく好循環を築くのが、まさに現代の理想的な人生の姿のように思います。
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