「ほめ上手」「頼られ上手」「受け入れ上手」に徹する
人間ひとりのもてる能力には限りがあります。
ビジネスの現場でも、自分ひとりの力ではどうすることもできない問題やトラブルが発生して困惑することはよくあります。
そんなとき、自分の弱点をカバーしてくれる協力者たちの手助けが得られれば、問題解決が楽になることはまちがいありません。
まわりの人たちと上手な相互依存関係を築きたいという考えは、おそらくだれもがもっているでしょう。
しかし、人づき合いはなかなか難しいもの。
現実には職場などで人間関係がうまくいかずに悩んでいる人は多いはずです。
前出のコフートによれば、人間が他者に求めるものは、(1)鏡自己対象機能、(2)理想化自己対象機能、(3)双子自己対象機能のおよそ三つに分類されます。
それぞれの詳細については後に触れることにしますが、この三つのニーズが満たされない相手と接するとき、人は不愉快になり、攻撃的になるとされているわけです。
逆にいえば、この三つのニーズを満たしてくれる人に出会ったときはその人が好きになるし、その人を手放したくないという気持ちが強くなることを示唆しています。
つまり、この人間の三つのニーズを理解して相手が心理的に依存できる状態をつくってあげられるかどうかが、良好な人間関係を築くうえでのポイントになるというわけです。
以下は、コフートが示した自己愛を満たすことができる三つの自己対象機能です。
それぞれの内容をよく理解し、よき協力者づくり、人間関係の円滑化、あるいは商談などの交渉術などに、幅広く応用していただきたいものです。
鏡自己対象機能
相手がなにかをしたとき、はめたり注目したりすることで相手の自己愛を満たす機能です。
これは対人関係を好転させる重要なテクニックです。
たとえば、恋人が髪型やファッションを変えたとき、それに気づいたり、ほめたりすることで相手が満足するのは、この機能が働くからです。
部下や同僚などの成功を素直にはめたり、−緒になって喜ぶことができれば、自己愛が満たされた人は必ず相手に好感をもつようになるでしょう。
理想化自己対象機能
いじめにあったりして落ち込み、不安になっている子どもでも、神様のように頼りになる父親から声をかけられ、ひざの上に乗せてもらったりすると、それだけで安心感を得ることができます。
また、自分もそのような強い父親のようになりたいと脹い、再び生きる方向性が与えられることもあるでしょう。
人間は、不安なときや落ち込んでいるとき、このような「神様」をもちたがります。
そして、父親が子どもの神様役を引き受けたように、こんな形で相手に安心感や生きる方向性を与えてあげるのが、この理想化自己対象機能と呼ばれるものです。
理想化自己対象機能は、上司が部下に対して神様役を演じたり、または互いに同等程度なら一般の人間関係にも応用可能です。
相手が不安を抱えたり落ち込んでいるとき、積極的に「強い人間」役を引き受けることで安心感を与えてあげるわけです。
それは結果的に、相手の尊敬を引き出すことにもつながります。
うまく機能すれば、信頼関係が深まることはまちがいありません。
双子自己対象機能
相手が落ち込んでいるとき、こちらが必死になってほめているのに「お世辞をいってるだけ」とつれない返事を返されたり、神様役を引き受けようと努力してもかえって「あなたは優秀だから」とひがまれてしまうことがあります。
こういうときの人間というものは、相手が自分と同じ人間だと感じられなくなっていますから、鏡自己対象機能や理想化自己対象機能のテクニックを駆使してもうまくいきません。
そんなときに有効なのが、双子自己対象機能のテクニックです。
双子自己対象機能のポイントは、相手が自分と同じ人間であることをわからせる点にあります。
「どうせ自分なんか」と非適応的な言動をとってばかりいる問題児的な人は、世の中のどの職場にもいるものです。
そういうケースは、こちらから話しかけてあげるのです。
たとえば、「私にも同じような経験があるよ」とか、「あなたを助けてあげられない自分が情けない」とか、自分も相手も同じ人間である感覚をもたせることで、関係の円滑化を図るのです。
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