自信がないときの「頼り上手」変身法
やる気はあるのになかなか仕事が手につかない、わかってはいるけどできないというのは、だれもが1度や2度は経験したことのある悩みです。
こんなとき、まわりで眺めているだけの無責任な第三者は、「悩む暇があったらその分努力すればいい」などといったりするものですが、本人にしてみればそんなアドバイスは迷惑以外のなにものでもありません。
人はひとりでは生きられないもの。
自分を支えきれないときは遠慮なくまわりにサポートを求めるべし。
考えることとやることがかみ合わない状況は、だれにでもよくあります。
営業成績が伸び悩んだり、リストラの危機にさらされたり、とくに精神が不安定な時期にはなおさらです。
こうした問題は、最終的には自分の力で解決していくしかないのですが、サポートをしてくれるよき理解者がいれば、窮地から早く脱することができるのもたしかです。
精神分析の祖といわれるフロイトは、心の病は無意識の不安が引き起こしていると主張しました。
そして、「不安の正体を解釈して治す」という精神分析による治療モデルを考え出しています。
その根底にあるのは、「自我をしっかりさせる」ことで不安にすすんで立ち向かえるようにするという、いわゆる自我心理学と呼ばれる考え方です。
自我心理学の影響を強く受けているアメリカでは、幼児の頃から自立させることをよしとしています。
三歳くらいになると個室を与えますし、泣いてもわめいてもひとりで寝かせる習慣などはその象徴です。
よちよち歩きの子どもが転んでも、アメリカ人の親はすぐに助けることはせず、子どもが自分で起きあがるのをじっと待っています。
人に頼るのはよくない、自力で困難を乗り越えてこそ一人前の大人になるという自我心理学理論を、子育てにおいてそのまま実践しているわけです。
この考え方が、教育学にもそのまま応用されています。
ところが、最近の風潮として、フロイト流の自我心理学を見直す考え方がアメリカでも主流になりつつあるのです。
自我心理学を見直す流れは、コフートに代表される自己心理学の考え方のなかに見ることができます。
人は人との関係のなかで生き、依存し合ったりはめられたりすることで成長していくというのが、この新たな流れのモデルです。
根底には、「自我をしっかりさせる」ではなく、「他者との関係のなかで自信を回復することで自分をしっかりさせていこう」という発想があります。
つまり、自己心理学的な立場に立てば、自分を支えきれなくなったときはひとりで解決することにこだわる必要はないということです。
人はひとりでは苦しくてできないことでも、だれかに支えてもらうことで努力を持続できます。
それが単なる個人の成長にとどまらず、支えてくれたまわりの成長にもつながるのです。
これまでの人生を振り返るとき、親友や恋人、両親、よき伴侶などに支えられたおかげで苦難を乗り切ることができたという経験は、だれもがもっているはずです。
多くの受験生を指導してきた私自身の経験からいっても、弧独に耐え、自分の力だけで悩みや困難を乗り越えてきたという人は、ほとんど見たことがありません。
自我心理学モデルは、人間の心を理解するときには役立ちますが、その人間が不安に陥ったときにどう生きればいいのかという問題の解決にはあまり役に立たないという批判が強まっています。
むしろ、人間関係に注目した自己心理学的な考え方のほうが、困難にぶつかった状況を打開するためのより現実的なヒントを多く含んでいるように思います。
一方的に依存するのは考えものですが、まわりとギブ・アンド・テイクの関係を築いて苦しいときに支え合うことは、恥ずかしいことでも悪いことでもありません。
非常に合理的な解決法なのです。
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