EQ(心の知能指数)はリストラ時代にこそ鍛えておけ
さて、ここでいったん認知心理学から離れて、昨今新しいタイプの知的能力として注目されているEQという概念について述べることにしましょう。
対人関係や感情コントロールに重点を置くEQの概念は、エール大学のピーター・サロヴェイとニューバンプシャー大学のジョン・メイヤーによって提唱されました。
人の能力をはかるものとしてそれまで主流だったIQに対抗する概念として受け止められ、(1)自分の感情を正確に知る、(2)自分の感情をコントロールできる、(3)楽観的に物事を考える、(4)相手の感情を知る、(5)社交能力の五つの能力を柱にしています。
EQはそもそも、IQの高いエリートのなかにそれをうまく使えないでいる人間がいるという現実の問題を直視し、彼らに欠けている能力とは何かを検討するために考えられた概念です。
その意味では、IQ=知的機能が高い人間は社会で成功するはずである、成功の背景にはIQ的能力は不可欠である、という前提がベースにあることがうかがえます。
実際に会社でまわりを眺めてみれば一目瞭然ですが、出世を果たしている人は、根回しがうまかったり、上司の受けがよかったりと、人間関係のもち方に長けているケースが大半です。
世間的なイメージとしては、高学歴で世している人にはなぜか「冷たく傲慢な人」というステレオタイプの評判がつきまといますが、これが明らかにまちがいであることがわかります。
そもそも日本の社会では、感情のコントロール能力、他人の気持ちを理解する能力が、昔から強く要求されていました。
学歴重視、年功序列の時代から、高学歴でありながら出世できなかった人は、まさにこのEQ能力が足りないタイプでした。
ちなみに、EQ的能力を古くから評価してきた日本では、社会生活や日常生活のなかでその必要性が高いこともあって、諸外国に比べると人々のEQが比較的高い傾向にあります。
このことは、「ビジネス心理戦」に強い「できるビジネスマン」の必須要件である「共感能力」の観点からも好ましいものなので、意識して日常生活を送るなどして、EQ能力には大いに磨きをかけたいものです。
なお、その際の注意点としてぜひ触れておきたいのは、EQ能力を高めればいいからと、IQ的知的トレーニングをないがしろにしていいということにはならないということです。
EQとIQは、本来対立するものではないはずなのに、「IQが高いとEQが低い」と誤解している人は意外に多く、これは困りものです。
IQの高さとEQがなんら関係ないことは、日本にEQ概念を紹介した『えQ − こころの知能指数』の著者、ダニエル・ゴールマンも明言しています。
このことは私自身、彼との対談のなかで直接確認しています。
IQとEQの両方を同時進行で高めることは決して欲張りではありません。
むしろ積極的に行うべきなのです。
繰り返しになりますが、十分な知識を備えること、柔軟な推論能力を磨くこと、さらにはメタ認知的自己感情把握ないしコントロールや、対人関係能力を高めていくことなどは、どれも他の要素と対立するものではありません。
そのことを理解したうえでEQ的能力を伸ばしていくことは、「ビジネス心理戦」に強い「できるビジネスマン」へ到達する近道となるのです。
EQの五つの柱
- (1)自分の感情を正確に知る。
- (2)自分の感情をコントロールできる。
- (3)楽観的に物事を考える(自分を動機つけられる)。
- (4)相手の感情を知る。
- (5)社交能力。
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